The Beginning Story: Episode 10

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Part A

Part B

廃墟の街
ワルプルギスの夜が撃退された直後。
戦いの後の瓦礫の中で、苦しみに身を捩るまどか。
その手に握ったソウルジエムが、グリーフシードの如く真っ黒に染まっている。
まどか「ううう...あぐうううツ!」
ほむら「どうしたの!?ねえ鹿目さん、しっかりして!」
まどか「どうして...ああああああツ!!」
まどかの悲鳴とともに、そのソウルジエムから魔女が孵化する。
x x x
降り注ぐ雨の中、眼鏡ほむらが魔法少女スタイルのまま、虚ろな眼差しでまどかの遺体を前にしている。
ほむら「どうして...何でこんな...」
譫言のように眩く眼鏡ほむらの左手の盾、砂の流れ尽きた砂時計のロックが外れ、ぐるりと廻って逆さになる。一気に遡る時間。
夜の病院
病室のベッドの中で、はっと目覚めるほむら。またも退院前の日付に戻っている。
ほむら「伝えなきゃ...みんな、キユウベえに騙されてる!」
廃工場内部
夜、魔女退治を前にして作戦会議中のまどか、マミ、さやか、そして眼鏡ほむら。全員が魔法少女スタイル。
さやか「ーーあのさあ、キユウべえがそんな嘘ついて、いったい何の得があるわけ?」
ほむら「それは...」
露骨に訝るさやかに対し、うまく説明できない眼鏡ほむら。
さやか「あたしたちに妙なこと吹き込んで、仲間割れでもさせたいの?まさかあんた、本当はあの杏子とかいうヤツとグルなんじゃないでしょうね」
ほむら「ち、違うわ!」
まどか「さやかちゃん...それこそ仲間割れだよ」
まどかに窘められ、不平も露わに歎息するさやか。
さやか「どっちにしろ、あたし、この子とチーム組むのは反対だわ。まどかやマミさんは飛び道具だから平気だろうけど、いきなり日の前で爆発とか、ちょっと勘弁してほしいんだよね。何度巻き込まれそうになったことか」
マミ「暁美さんには、爆弾以外の武器つてないのかしら?」
ほむら「...ちょっと考えてみます」
暴力団事務所
時間静止魔術が発動中。動きを止めた組員たちを後目に、ロッカーの中身を漁っている眼鏡ほむら。
ドスや日本刀は絞り捨て、リボルパー拳銃や猟銃を回収して、盾の裏の四次元ポケットに収納していく。
魔女の結界
魔女化したさやかの結界。無数の触手で襲いかかってくる魔女さやかから、必死に身を守るまどか、マミ、杏子、眼鏡ほむら。
杏子「テメエいつたい何なんだ!?さやかに何をしやがつたツ!?」
まどか「...ッ...さやかちゃん、やめて...お願い、思い出して!こんなこと、さやかちやんだって嫌だった筈だよ!」
訴えかけるまどか目掛けて、5本の触手が振り下ろされる。
ほむら「くツ」
すかさず時間を停止させ、盾の裏からリボルパー拳銃を出す眼鏡ほむら。慎重に狙いをつけて発砲。弾丸は銃口から出た瞬間(ほむらと接点が断たれた途端)に静止し、煙もろとも空中に固定される。そうやって5発の弾丸を宙に並べてから、時間静止を解除するほむら。
一斉に動き出した弾丸は5発同時に触手を撃ち抜き、まどかを窮地から救う。
ほむら「...ごめん、美樹さん」
眼鏡ほむら、悲痛に呟いてから、パイプ爆弾を手に瞬間移動。
次の刹那、魔女さやかの口の中に置き去リにされた爆弾が発火し、粉微塵に吹き飛ばす。
魔女の消滅とともに、結界は解除され通常空間へ。そこは九話冒頭で戦いの舞台になったのと同じ、深夜の駅のホームである。
あらためて、さやかの魔女化という事態の重さに、しばし言葉もなく立ち尽くす一同。
杏子「...さやか...畜生...こんなことって」
まどか「酷いよ...こんなの、あんまりだよ...」
茫然自失の杏子と、泣き崩れるまどか。
だが次の瞬間、いきなりほむらの足元で発動したマミの緊縛魔術が、ほむらの動きを封じ込める。
ほむら「ッ!?」
さらにマミの魔銃が火を噴き、杏子のソウルジエムを吹き飛ばす。何が起こったのかすら分からない表情で、くずおれる杏子。
ほむら「巴さんーー」
魔銃を構えたマミの表情は、完全に正気を失っている。マミ「ソウルジエムが魔女を産むなら...みんな死ぬしかないじゃない!あなたも、私もツ」
ほむら、時間を止めて緊縛から逃れようと身悶えするが、まるで身動きできないままに効続時間が終わってしまう。いよいよ絶体絶命。マミの銃口を前にして絶望する眼鏡ほむら。
ほむら「ゃ、やめーー」
マミの銃が火を噴こうとしたそのとき、横合いから放たれたまどかの矢が、マミのソウルジエムを撃ち抜く。ぐらりと傾き、くずおれるマミの身体。
弓を構えた姿勢のまま、肩を震わせて働哭するまどか。
まどか「...嫌だ...もう、嫌だよ、こんなの...」
マミの魔力が失せたせいで束縛魔術から解放された眼鏡ほむら。かけるべき言葉於さえ見つからず苦悩しながらも、鳴咽するまどかの側に寄り、寄リ添う。
ほむら「...大丈夫だよ...二人で、頑張ろう。一緒にワルプルギスの夜を倒そう」
まどか「...うん...」
In a Dream 廃墟の街
ワルプルギスの夜、撃退の後。瓦傑の山の中に、寄リ添って倒れているまどかとほむら。ほむらの眼鏡は割れている。
二人とも限界以上の魔力を消費したせいで、ソウルジエムは真っ黒に染まっている。
まどか「わたしたちも、もう、おしまいだね...」
お互いのソウルジエムを見比べて、寂しそうに呟くまどか。
ほむら「グリーフシードは?」
まどか、静かにかぶりを振る。
絶望と諦めが、むしろ眼鏡ほむらに安らぎをもたらす。壊れた眼鏡を捨て、憑き物が落ちたかのように和やかな口調で、語りかけるほむら。
ほむら「...ねえ、私たち、このまま二人で怪物になって...こんな世界、何もかも滅茶苦茶にしちゃおうか...」
まどか「...」
まどかの返事はない。ほむらは先を続ける。
ほむら「嫌なことも、悲しいことも、ぜんぶなかったことにしちゃえるぐらい、壊して、壊しまくって、さ...それはそれで、いいと思わない?」
返事の代わりに、隠し持っていたグリーフシードで、ほむらのソウルジエムに触れるまどか。
瞬時に呪いの穢れはグリーフシードに吸い取られ、ほむらのソウルジェムは浄化される。
ほむら「...ツ!?」
まどか「ーーさっきのは、嘘。一個だけ取っておいたんだ」
愕然とするほむらに、微笑みかけるまどか。
ほむら「そんな...なんで、私に...」
まどか「わたしに出来なくて、ほむらちゃんに出来ること、お願いしたいから...」
まどか、輝きを取り戻したほむらのソウルジエムに、愛おしむように指先で触れながら、
まどか「ほむらちゃん、過去に戻れるんだよね?こんな終わり方にならないように、歴史を変えられるって、言ってたよね...」
ほむら「...うん」
まどか「キュゥベえに騙される前の、パカなわたしを...助けてあげて、くれないかな」
ほむら、まどかの手を握りしめて答える。
ほむら「約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる」
まどか「良かった...う、ッ!」
安堵の笑みを見せてから、苦痛に呻くまどか。いよいよ彼女のソウルジエムは孵化せんと脈動しはじめる。
まどか「...もうひとつ、頼んでいい?」
ほむら「...ツ」
頼み事の内容を察して、思わず涙を落とすほむら。
まどか「わたし、魔女にはなりたくない...嫌なことも、悲しいこともあったけど、守りたいものだって沢山、この世界にはあったから...」
ほむら「...まどか...ッ」
苦痛に耐えながら、尚も微笑んで、ひび割れはじめた自分のソウルジエムを手に乗せ、差し出すまどか。
まどか「ほむらちゃん...やっと、名前で呼んでくれたね...嬉しい、な...」
ほむら「...ッ」
鳴咽を噛み殺しながら、まどかのソウルジエムに拳銃の狙いをつけるほむら。
廃墟に、銃声が轟き波る。
夜の病院
病室のベッドから、がぱっと跳ね起きるほむら。
そのまま足早に洗面所へ。
ほむらM『誰も、未来を信じないーー』
鏡の前で、眼鏡を外し、両目に魔力を込めて視力を矯正。
さらに三つ編みを解いてストレートヘアになる。
ほむらM『誰も、未来を受け止められない。だったら、私はーー』
まどかの部屋
夜、寝る前に勉強机に向かっているまどか。
ふと風を感じて、驚いて振り向く。
開け放たれた窓の外、闇夜の中に佇むほむらの影。
まどか「...だ、誰?」
ほむら「まどか...あなたに奇跡を約束して取り入ろうとする者が現れても、決して言いなりになっては駄目」
まどか「...え?あの...」
用件を告げただけで姿を消すほむら。
窓枠の外には、無惨に潰されたキユウベえの死骸が転がっている。
米軍基地
静止した時間の中、棒立ちの兵士たちの横をすリ抜けるほむら。武器庫の扉を開け放ち、整然と並ぶ機関銃や手榴弹を見据える。
魔女の結界
襲いかかってくる魔女を前にして、悠然と佇んでいる魔法少女ほむら。
ほむらM 『...もう誰にも頼らない。誰に分かってもらう必要もない』
魔女の攻撃が届く寸前で時間停止。ニ挺拳銃を、さらに機関銃を乱射して銃弾の壁を作り出す。
ほむらM『もうまどかには戦わせない。全ての魔女は、私一人で片付ける...』
駄目押しに手榴弹のピンを抜いて魔女の懐に投げ入れる。そして静止解除。
魔女「ギヤアアアアツ!!」
いきなり銃弾の雨を浴びた上に手榴弹に吹き飛ばされ、絶命して消えていく魔女。
ほむらM『そして今度こそ、ワルプルギスの夜を、この手で...』
燃えさかる市街地
ワルプルギスの襲撃を受け、炎に包まれた街の中。
傷つき、荒い息を吐きながら、単身で巨大な魔女と対峙するほむら。
その背中を見守るまどかとキユウベえ。
まどか「ひどい...」
キユウベえ「仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた」
まどか「そんな...あんまりだよ! こんなのってないよ!」
キユウべえの気配を察し、戦いながらもまどかに向かって叫ぶほむら。
ほむら「まどか!そいつの言葉に耳を貸しちゃ駄目!」
だが叫びは、ワルプルギスの咆吼と怒涛の攻撃に掻き消され、まどかの耳に届かない。
キユウベえ「締めたら、それまでだ。でも君れなら運命を変えられる」
まどか「...本当なの?」
キユウべえ「避けようのない滅びも、嘆きも、すべて君が覆せばいい。そのための力が、君には備わってるんだから」
ほむら、まどかたちに気を取られている隙に、ワルプルギスの一撃をくらう。地に伏しながら、それでも必死にまどかに呼びかけるほむら。
ほむら「騙されないで!そいつの思う壺よ!」
だがやはり声はまどかに届かない。
まどか「わたしなんかでも、本当に何かできるの?こんな結末を変えられるの?」
キュゥべえ「もちろんさ。...だから僕と契約して、魔法少女になってよ!」
ほむら「駄目えええツ!!」
絶叫するほむら。だがまどかとキユウベえの間で交わされる契約の閃光が、彼女の目を眩ませる。
廃墟の街
吹きすさぶ風の中、瓦礫の山の上にひざまずくほむら。
傷つき、泣き疲れて放心状態。
隣の瓦傑の山の上には、キユウべえが座っている。
キユウべえ「本当に物凄かったね。変身したまどかは」
ほむら「...」
キユウべえ「彼女なら最強の魔法少女になるだろうと予測していたけれど、まさかあのワルプルギスの夜を一撃で倒すとはね...」
ほむら「その結果どうなるのかも、見越した上だったの?」
ほむら、怒りを噛み殺した掠れ声で問う。
地平線の彼方では、ワルプルギスの夜よりも遙かに巨大で凶暴な魔女と化したまどかが、破壊の限りを尽くしている。
キユウべえ「遅かれ早かれ、結末は一緒だよ」
何ら悪びれた様子もなく平然と答えるキユウべえ。
キュゥべえ「彼女は以強の魔法少女として、最大の敵を倒してしまったんだ。もちろん後は最悪の魔女になるしかない。今のまどかなら、おそらく10日かそこいらでこの星を壊滅させてしまうんじゃないかな。ーーまあ、あとは君たち人類の問題だ。僕らのエネルギー回収ノルマは概ね達成できたしね」
ほむら「あんたたちは、間違いなく人類の敵よ」
キュゥべえ「僕たちが永らく干渉してきたからこそ、この星の文明はここまで繁栄できたんだよ。君たちだって、鶏や牛と敵対関係にあるわけじゃないだろう?」
ほむらの眼差しがなおいっそう憎しみを帯びるのに気付いて、面倒臭そうに歎息するキユウベえ。
キュゥべえ「ああ、こういう比喩はなおさら感情に障るんだったつけね。まったく、人類とのコミュニケーションは本当に難しいなあ」

ほむら、決意を固めて立ち上がり、魔女まどかに背を向ける。

キユウベえ「...戦わないのかい?」
ほむら「いいえ。私の戦場は、ここじゃない」
盾の砂時計を反転させるほむら。遡る時間。
モールの地下通路
一話{BパートP.18】と同シチュエーション。逃げるキユウベえと追うほむら。
ほむらM『繰り返す...私は何度でも繰り返す...』
ほむらの時間静止攻撃で、粉々に撃ち砕かれるキュゥべぇ。立ち止まり、荒い息をつきながらその死骸を確認するほむら。
だがそんな彼女の背後を、別のキユゥベえの影が駆け抜ける。
ほむらM『同じ時間を何度も巡り、たったひとつの出口を探る。
あなたを絶望の運命から救い出す道を...』
気付いたほむらがさらに追う。だが廊下の角を曲がった先で、キユウベえを抱き留めたまどかと対面してしまう。
ほむらM『まどか...たった一人の、私の友達』
まどか「ほむら...ちゃん!?」
怯えきったまどかの表情に、心苛まれるほむら。
だがそれでも弱気を見せるわけにはいかず、強面のまま、まどかに詰め寄っていくほむら。
ほむらM『あなたのためなら、私は永遠の迷路に閉じ込められでも構わない』