Magia Exedra Story Transcripts/temp/portrait scene0 mabayu
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Episode 1
| (Narration) Aio Mabayu | (もしも私の人生が 1本の映画だったら…) |
|---|---|
| (Narration) Aio Mabayu | (ごく当たり前に過ぎていく ごく当たり前の日常…) |
| (Narration) Aio Mabayu | (それはとっても退屈で 観客の半分は途中で居眠り) |
| (Narration) Aio Mabayu | (とても人様にお見せできる ようなものじゃない…) |
| (Narration) Aio Mabayu | (そんなふうに思っていました) |
| (Narration) Aio Mabayu | (だってまさか 突然時間が止まるなんて…) |
| (Narration) Aio Mabayu | (そんなこと、本気で信じられる わけないじゃないですか!) |
| ♪ Musical track: Amicae Carae Meae | |
| ………… | |
| (さっきのアレ、なんですか? 信号もヤケに長かったし…) | |
| (時間が止まってたとしか… それ以外、考えられない…) | |
| (うーん、しかし…そんな 非科学的なこと、起こるワケ…) | |
| (起こるなら…せめてテスト中に 起こって欲しかった…!!) | |
| (カンニング させて欲しかった…!) | |
| (悔しい…!) | |
| …………いやいや | |
| (っていうか…うーん 私、疲れてるんですかね…) | |
| (まさかこれも、夢の続きとか そういうオチじゃ…) | |
| 咲笑さん | |
| なあに、まばゆちゃん? | |
| ほっぺ、つねってくれませんか? | |
| ♪ Music stops. | |
| えいっ | |
| ♪ Musical track: Lost Tension | |
| いででででっ! | |
| ちゅ、ちゅうちょがなひ… | |
| やあっ、とりゃー! | |
| だだだ、だいじょうぶ! もう、だいじょうぶれすからぁ… | |
| はぁ…咲笑さん、やることが極端 | |
| 今日は様子が変よ また夜更かししちゃった? | |
| そうじゃ、ないんですけど… | |
| いらっしゃいませー | |
| いらっしゃいま…せ | |
| ♪ Music stops. | |
| あ… | |
| ♪ Musical track: Postmeridie | |
| ええと…もしかして 愛生…さん? | |
| クラスメイトの、たしか… 巴さん…ですよね | |
| すみません!あ、あの…っ!! これ、アルバイトじゃなくて! | |
| 家の、手伝いで、だからその で、で、できれば内密に… | |
| ふふふ、大丈夫よ | |
| ほ…ほんとうですかっ!? | |
| だって、このお店にはいつも お世話になってるんだもの | |
| あ、あ、ありがとうございます! 恩に着ます!! | |
| ねえ、まばゆちゃん? | |
| さっきのお客さんは 同じクラスの子かしら? | |
| はい、巴マミさんって言って とっても優秀な生徒さんで… | |
| ステキなお友だちね | |
| おおお、お友だちなんてそんな! | |
| 私みたいな陰キャが友だちに なれるワケないじゃないですか! | |
| まともに話したのも、今日が 初めてですってば! | |
| あら、そう? そうは見えなかったけど | |
| はぁ…まったく、私を 甘く見ないでくださいよ! | |
| なんと言っても、筋金入りの ボッチなんですからね! | |
| ♪ Music stops. | |
Episode 2
| ♪ Musical track: Desiderium | |
|---|---|
| それじゃあ、次の問題… | |
| 巴マミ、計算してみろ | |
| はい | |
| (うーん、さすが) | |
| (私には全然わからない問題も 淀みなくすらすら解いて…) | |
| (別世界の存在って感じです) | |
| (それにくらべて、私は…) | |
| (成績、ダメ) | |
| (運動、下手) | |
| (友だち、皆無) | |
| (趣味、映画観賞) | |
| (…陰キャの詰め合わせ 欲張りセットですか?) | |
| (毎日学校行って…お店を手伝って… 映画を見て…コタツで寝て…) | |
| (繰り返し…繰り返し…) | |
| (繰り返し…繰り返し…) | |
| (なんか、ループもの みたいですね) | |
| (繰り返し…繰り返し…) | |
| (繰り返し…繰り返し…) | |
| (繰り返し…繰り返し…) | |
| ♪ Music stops. | |
| (繰り返し…繰り返し…) | |
| ………… | |
| へ? | |
| また…時間、止まってます!? | |
| ♪ Musical track: Incertus | |
| (ううーん、やっぱり、変) | |
| (一度だけなら気のせいかとも 思いましたけども…) | |
| (まさか、もしかして…) | |
| (私に前世から宿っていた不思議 パワーが目覚めたのでは!?) | |
| って、まさかそんなことはね… あるわけ…ないわけ… | |
| …ん? | |
| みゃーう | |
| エイミー! | |
| (お散歩の途中ですか? お店の前でよく見るんですよね) | |
| (お仕事中じゃなかったら 遊んであげたいんですが) | |
| あ…! | |
| (もしも、私が時間を止める 能力に目覚めたとしたら…) | |
| (エイミーにそっと近づいて なでなでしたりできるはず!) | |
| にひひひひ… 止まれ…止まれ… | |
| ♪ Music stops. | |
| 時間よ…止まれ… 止まるのだー!でりゃあああ! | |
| まばゆちゃん…!? | |
| え | |
| ♪ Musical track: Postmeridie | |
| ええと…どうしちゃったの? | |
| あ、いやですね、咲笑さん ただの冗談、冗談ですよ | |
| あはははは… | |
| (は、は、恥ずかしいところを 見られてしまった…!) | |
| (きっと、映画の見過ぎで頭が おかしくなったんだと思われる) | |
| (いや、でもホントに そうなっちゃったのかも…) | |
| ほら、まばゆちゃん オーダー溜まってるわよ | |
| は、はいっ! | |
| (咲笑さんは、レコンパンスを 切り盛りするパティシエで…) | |
| (身寄りをなくした私を 引き取った叔母でもあります) | |
| (あんまり心配は かけたくないんですが…) | |
| はぁ… | |
| えええええええーっ!? | |
| わわわわっ! | |
| ど、どうしました咲笑さん? | |
| だって、そのカフェ・マキアート どうしたの? | |
| どうしたって… ただ絵を描いただけですけど | |
| 私また何かやっちゃいました? | |
| だってまばゆちゃん、今まで つくったことなかったでしょ? | |
| なのに、そんなにステキな エイミーちゃんを描くなんて!! | |
| え?あー…そういえば… 今まで、描いた記憶…ない、かも | |
| 私ってばもしかして…天才!? | |
| ふんふふんふんふーん | |
| (絵を咲笑さんに絶賛されて お客さんにも褒められて…) | |
| (こんなに上機嫌になるなんて 我ながらチョロいですね) | |
| にひひひひ… | |
| ん?え、エイミーちゃん!? | |
| なーう、ごろごろ… | |
| えっ?えっ?えっ? | |
| な、なんですか急に!? 突然の大サービス!? | |
| お、おさわりしちゃって 問題ないんです?ですね? | |
| みゃーお | |
| うひょー!あ、ありがたやー! | |
| なでなで…なでなで… おおおおお… | |
| (私は成績ダメ、運動下手 友だちもいないボッチですけど) | |
| (でもまあ、映画は楽しいし 咲笑さんも優しいし…) | |
| (お手伝いも嫌いじゃないし 楽しいこともあったりで…) | |
| (私は私なりに 満足して毎日を暮らしてます) | |
| (そりゃまあ、マミさんみたいに 完璧じゃあないですけど…) | |
| (コレはコレで、幸せに やっているワケですよ) | |
| (いや、ホントに) | |
| ♪ Music stops. | |
| ♪ Musical track: Scaena Felix | |
| なのに、うーん… なんででしょう | |
| なんか、しっくり来ないというか 忘れちゃってるよーな気が… | |
| しかも、それがめちゃくちゃ 大事なことだったよーな… | |
| ん…?あ…あれ…? | |
| ま、ま、まままま… | |
| まさか、この映画! タイムマシンが…公衆電話!? | |
| って、見たことあるじゃ ないですかー!! | |
| せっかくレンタルしてきたのに 忘れてたなんて… | |
| トホホホホホ…! | |
| ♪ Music stops. | |
Episode 3
| ♪ Musical track: Desiderium | |
|---|---|
| よーし、それじゃ 出席を取るぞー! | |
| 愛生まばゆ | |
| ふ、ふぁい… | |
| (私の名前、出席番号順で いつも最初なんですよね) | |
| (授業で最初に指名されたりも しょっちゅうだし) | |
| (サボり魔の私には 酷な名字ですよ、マッタク…) | |
| 巴マミ | |
| ………… | |
| 巴マミ 居ないのか? | |
| …めずらしいな 巴が連絡もなしに休むなんて | |
| (ん…?) | |
| (確かにちょっと 珍しいかも) | |
| (ま、優等生にだって サボりたい日はありますよね) | |
| ♪ Music stops. | |
| ♪ Musical track: Postmeridie | |
| きゃーっ、かわいい! | |
| えっ?これすごくない!? | |
| あの、これ、店員さんが 描いたんですか? | |
| ええ…まあ… | |
| あのっ!もし良かったら ネットにアップしても… | |
| いえいえ!大したものでも ないですし、恥ずかしいし… | |
| もちろん!アップしてOKです | |
| お店の名前も入れて たくさん宣伝して下さいね! | |
| あ、は、はい! | |
| う、うううう… 咲笑さんってば… | |
| 褒めてくれてるんだし 恥ずかしがることないでしょう | |
| もしかしたら ネットで話題になるかもよ | |
| そ、そんなの…恐ろしすぎます! | |
| 見ず知らずの人間が、私の絵を 見て、弄って、嘲笑って… | |
| 晒されて、住所特定されて 卒アルがアップされて… | |
| ま、まばゆちゃん?そんな ネガティブにならなくても… | |
| 魚に空を飛べって言うんですか? | |
| しかも私は深海魚… | |
| 光の届かない、暗ーい海の 底でしか生きられない魚ですよ! | |
| うーん、そんなことないと 思うんだけれどなあ… | |
| ありますよ! | |
| 私の陰キャっぷりを 舐めてもらっては困ります | |
| やれやれ… | |
| 私はそういう性格だけど でも、不自由はないし… | |
| だから別に、自分が不幸だなんて 思いませんし… | |
| でも最近、ずーっと 浮かない顔よね | |
| ………… | |
| あのお友だち、最近お店に来ないし 喧嘩しちゃったとか? | |
| だから、マミさんはただの クラスメイトですってば! | |
| まあ…最近学校を休んでて 心配ではありますけど… | |
| それじゃあ、別に何か心配事が? | |
| いや、まあ、それはその… | |
| (時間が止まってる…なんて 言ったら心配かけちゃうし…) | |
| (あんまり隠し事をしたくは ないですけれども…) | |
| (なんか、ごまかさないと…) | |
| え、ええと、ですね… | |
| さ、最近なんか、心に穴が 空いてるというか… | |
| 忘れてはいけない重要なことを 忘れてしまっているような… | |
| なんか、そんな気がするんです | |
| だからたぶんそのせいで 考え事が多いのかも… | |
| ♪ Music stops. | |
| ………… | |
| あれ?咲笑さん? | |
| (なんか急に深刻な雰囲気…?) | |
| ♪ Musical track: Amicae Carae Meae | |
| まばゆちゃんは、嫌なことを 急に思い出しちゃうことはない? | |
| あ…はい、ありますあります! | |
| なんで昨日、クラスであんな 返事をしちゃったんだろう、とか | |
| 急に思い出しちゃって 「うがー!」って叫びだしたり | |
| あれって一体なんなんですかね | |
| 叫ぶだけで済むならいいけれど 場合によってはもっと深刻で… | |
| その出来事にずっと向き合うと 心が壊れてしまうこともあるの | |
| そうならないように、自分の 記憶を隠してしまう… | |
| そういう働きが、人にはあるのよ | |
| 記憶を、隠す…? | |
| あなたが、もしも何かを 忘れてしまっていたとしても… | |
| それは、忘れた方が いいことなのよ | |
| ………… | |
| まばゆちゃん? | |
| 嫌です | |
| 忘れてしまったことが 忘れた方がいいことだなんて… | |
| 忘れた方がいいことが この世の中にあるだなんて… | |
| ♪ Music stops. | |
| そんなの…私、絶対 納得できませんッ!! | |
| ………… | |
| ………… | |
| ………… | |
| あ…やば… | |
| (我を忘れて、大声を 出してしまった…) | |
| (は、は、は、恥ずかしいっ!) | |
| ♪ Musical track: Scaena Felix | |
| よーし | |
| 今日の映画は 先日の続編ですよ…! | |
| 向こうの映画は見たこと自体 すっかり忘れていましたが… | |
| 続編はまだ、初見の… | |
| 忘れてしまったことが 忘れた方がいいことだなんて… | |
| 忘れた方がいいことが この世の中にあるだなんて… | |
| そんなの…私、絶対 納得できませんッ!! | |
| ぎゃああああああっ! | |
| やだー!やだー! 急に思い出してしまったー! | |
| 店の中で急に奇声を 発するだなんて…ううう… | |
| なんて、なんて恥ずかしい… | |
| というか、これを思い出すって どういうことですか? | |
| 忘れた方がいいことが世の中に あるのなら… | |
| 真っ先にこの記憶を忘れさせて くださいよー!ううううう…! | |
| ………… | |
| でも…私、なんで大声 出しちゃったんですかね… | |
| 別にそんな、キレるところじゃ ないと思うんですけど… | |
| う、うう~ん… | |
| 我ながら謎 | |
| ♪ Music stops. | |
Episode 4
| ♪ Musical track: Amicae Carae Meae | |
|---|---|
| ありがとうございましたー! | |
| まばゆちゃん、お疲れ様 | |
| 今日も先に上がってもらって いいわよ | |
| はーい | |
| あ、あの…咲笑さん | |
| この前は、仕事中に大声あげて しまって、スミマセンでした | |
| そんな、気にしないで | |
| それより、はい これ、今日のまかない | |
| 多めに余ったから、豪華な 詰め合わせになっちゃって… | |
| あ…えっと | |
| ん?どうしたの? | |
| ちょっと、最近体重が 気になるというか… | |
| ケーキの量は 減らした方がいいかなって… | |
| あら、そう… | |
| それじゃ、今日も お疲れ様でしたー | |
| (謝るには謝ったけど…) | |
| (あれからなんか、咲笑さんと ギクシャクしちゃってますね) | |
| (別に、なにか問題があるって わけでもないんですが…) | |
| ってか、あー… | |
| ケーキ、どうして 断っちゃったんだろ | |
| (豪華な詰め合わせ…わざわざ 用意してくれたのかも) | |
| (せっかく気を遣ってくれたのに あんなにあっさり断って) | |
| (いや…でも、私が近頃 食べすぎなのは間違いないし) | |
| (受け取っても、余らせたら 申し訳ないし) | |
| (だから、断った私は 別に悪くない) | |
| (って、悪いとか悪くないとか そういう話をしたいわけじゃ…) | |
| ♪ Music stops. | |
| …………あ | |
| また、時間…止まってる | |
| ♪ Musical track: Desiderium | |
| ま、時間が止まっても、全然 有効活用できないわけですが | |
| レンタルビデオ屋に忍びこんで コッソリ新作を借りる… | |
| とかも、考えましたけど ちょっと気が進まないというか | |
| 私はむしろ、ビデオ屋さんを 買い支えないといけない立場で… | |
| ってか…あれー? | |
| 借りてきた映画 全部見ちゃってますね | |
| 最近、映画を見るペースが 上がってるせい…かな | |
| 時間が止まってる間も プレイヤーを触ると再生できて… | |
| もしかしたらその分 たくさん消化できてるのかも | |
| うれしい悲鳴って ところですか | |
| ま、でも、仕方ないですね 今日はアーカイブの名作を…と | |
| んー、何がいいかな | |
| 知る人ぞ知る…な マニアック作品もいいですが… | |
| 今日はなんだか、もっと メジャーなエンタメ作品を… | |
| ん?あ、あれ? | |
| こんな映画 うちにありましたっけ? | |
| 未来から殺人マシーンが 襲ってくる、アレ…ですよね | |
| いや、めちゃくちゃ有名な名作… なのは、わかってるんですけど | |
| 全然、見た記憶がなくて 逆になんで覚えてないのか、謎 | |
| ま、いいや! | |
| 名作は何度繰り返して見ても いいもんですからね! | |
| とりあえず再生、再生、と!! | |
| いやー、面白かったー! | |
| 内容すっかり忘れてたんで もーたっぷり楽しめましたよ | |
| でも、例の名台詞は覚えてたし 絶対見たことがあるはずで… | |
| ………… | |
| う、うーん…なんか最近 忘れっぽくてダメですね | |
| まあいいや!それじゃあ続けて 2の方も見ちゃいましょうか | |
| ♪ Music stops. | |
| 次は、殺人鬼が味方になって 現れるんじゃないかしら | |
| え…? | |
| 今のって…お母さん? | |
| あれ?もしかして、私が 前に見たのって… | |
| あ、そうか…確か | |
| 私の記憶が確かなら この映画も一緒に観て… | |
| ♪ Musical track: Clementia | |
| すごい…全部、お母さんの 言った通りになったよ! | |
| 今の「グッジョブ!」って 機械に魂が宿ったんだよね!? | |
| ええ、きっとそうね | |
| それなのに死んじゃうなんて ロボットさんが、かわいそう… | |
| まばゆは優しいのね | |
| 味方と思ったのが敵だったのも 言った通りだったし… | |
| お母さん、この映画 前に見たことがあるの? | |
| いいえ、初めてよ | |
| うっそだー! | |
| 初めてだったら、こんなに次の お話がわかるわけないもん | |
| あ…もしかして、この映画の お話も、占いでわかったの!? | |
| 占い…そうね | |
| 少し、似ているところも あるかもしれないわね | |
| 似ている? | |
| 例えば、の話なんだけれどね | |
| 道路を渡っているとき目の前で おばあちゃんが転んだら… | |
| それを見ていた女の子は どうすると思う? | |
| それは、助けないとダメだよ | |
| 道路の向こう側から トラックが近づいていても? | |
| う、うーん…ええと… | |
| それでもやっぱり、できるだけ 助けようとすると思う! | |
| ええ、そうね | |
| それでそのお話、おばあちゃんは どうなったの? | |
| まさか…トラックに 轢かれちゃった? | |
| いいえ、きっと助かるわ | |
| だって私たちは、助かって 欲しいって願うんだもの | |
| お話はね、色んな出来事があって ハラハラドキドキするけれども… | |
| でもそれは、皆がお話を鏡にして 自分の姿を見ているからなのよ | |
| かがみ…? | |
| 占いも、それと同じなの | |
| たくさんの人がやってきて 色んなお話を聞かせてくれるわ | |
| 私は、お話を聞きながら 皆が見ている鏡の形を想像するの | |
| どこの部分が欠けていて どこの部分が足りないのか | |
| 全部埋めたものが、その人が 本当に語りたかった「お話」 | |
| 私の占いは、その欠けた部分を 探すお手伝いなのよ | |
| ………… | |
| よく、わかんない | |
| そうね、まだまばゆには 少し早かったかもね | |
| でも…だったら いっぱいお話を聞けばいいの? | |
| それで、お話の先が 想像できるようになったら… | |
| 私も、お母さんみたいに 占い師になれるかな? | |
| これからどうしようか 困っている人の力になれるかな? | |
| …そうね | |
| もしかしたら なれるかもしれないわね | |
| そっか…そうなんだ | |
| うん、わかった! | |
| 私、これから、いっぱい いっぱい、お話を見る! | |
| それで、お母さんみたいに 未来を占えるように… | |
| ♪ Music stops. | |
| ううん | |
| あなたは、私みたいには ならなくていいのよ | |
| ♪ Music stops. | |
Episode 5
| ♪ Musical track: Incertus | |
|---|---|
| それじゃあこの問題を、巴… | |
| ………… | |
| ん?巴はまだ休みなのか | |
| (授業を上の空で 聞き流しながら…) | |
| (頭の中には、あの日の記憶が ずーっと繰り返されています) | |
| (『私みたいには ならなくていい』) | |
| (そう言った、お母さんの顔は なんだかとても悲しそうで…) | |
| (私も、思い出すだけで 泣きそうになってしまいます) | |
| お疲れ様、まばゆちゃん 今日はもう、上がっていいわよ | |
| あの…咲笑さん | |
| ん…何? | |
| お母さんって、未来のことが 視えたりしたんですよね | |
| 占いのこと…本当は どう思ってたんでしょうか? | |
| 占いのこと? 急に、どうかした? | |
| いや、あの… なんていうか…ですね | |
| 私、こんなに映画をたくさん 観るようになったのは… | |
| お母さんみたいに、お話の未来が 先にわかるようになりたいって… | |
| それで、人の役に立てるように なりたいと思ったからだって… | |
| そういうこと、映画を観てたら 突然思い出しちゃって | |
| まばゆちゃん… | |
| ♪ Music stops. | |
| 『私みたいにはならなくていい』 | |
| お母さんがそう、言ったのは なんでなんですかね? | |
| ♪ Musical track: Confessio | |
| もしかして、私のこと… | |
| 嫌いだったのかな、なんて 考えちゃったりして… | |
| それは違うわ | |
| でも…それじゃあなんでです? | |
| 未来のことがわかって たくさんの人が救えて… | |
| だから私も、お母さんみたいに なりたいって思ったのに… | |
| そんなこと言う理由が 全然、わかんなくて… | |
| それは… | |
| ………… | |
| やっぱり、それも… | |
| 忘れた方がいいことですか? | |
| え… | |
| 忘れてしまったことは 忘れた方がいいこと… | |
| 私がお母さんとの思い出を 忘れてしまったのも… | |
| 私にとっては、忘れた方が いい思い出だったから…? | |
| まばゆちゃん | |
| 焦らなくても、大丈夫 | |
| もしそれが必要なら 必要な時にはちゃんと… | |
| 嫌なんです | |
| 私は…お母さんのことを ちゃんと覚えていたい | |
| 楽しいことも、辛いことも ぜんぶ、ぜんぶひっくるめて… | |
| 私の目に、焼き付けたい! | |
| ………… | |
| え、ええと… | |
| また、大声出してしまって スミマセン… | |
| お先に失礼します | |
| (まただ…) | |
| (また、咲笑さんを 困らせてしまいました…) | |
| (咲笑さんは何にも悪いこと してないのに…) | |
| (これじゃただの 八つ当たりです) | |
| (うん、やっぱり決めました) | |
| (このまま、モヤモヤとした 気持ちじゃいられません) | |
| (私、もっとちゃんと お母さんのこと、思い出そう!) | |
| ♪ Music stops. | |
Episode 6
| ♪ Musical track: Scaena Felix | |
|---|---|
| ええと…確かお店は あのビルでしたよね | |
| (私のお母さんは とても有名な占い師でした) | |
| (未来のことがよく当たるって 大評判!) | |
| (お父さんは、私が物心つく前に 亡くなっていたけれども…) | |
| (お母さんは女手ひとつで 私を育ててくれていて…) | |
| (なにひとつ、不自由する ことなんてありませんでした) | |
| …懐かしいですね | |
| いつも、仕事場には 入れてもらえませんでしたけど… | |
| (色々な悩みを抱えた人たちが 遠くからわざわざやってきて…) | |
| (お店に入るときは、みんな 深刻な顔をしていたけれど…) | |
| (お母さんの占いを聞いて 笑顔で外に出て行った) | |
| (それはまるで魔法みたいで…) | |
| (私もいつか、お母さんみたいに 誰かの役に立ちたいって思った) | |
| まあ…今の私には 絶対無理ですけど | |
| あー、せめて私にも、占いの 才能があったらなあ… | |
| ねえ、お母さん | |
| なあに、まばゆ | |
| お母さんは 未来が視えるんだよね? | |
| ええ、調子のいいときはね | |
| だったら、私の未来も占える? | |
| ごめんなさい それはできないわ | |
| えー!?どうして? | |
| だってまばゆは、未来を 占うことができたら… | |
| きっと、テストをカンニング したいって言うでしょう? | |
| あっ ば、バレてた… | |
| ふふふ | |
| 未来を視ることは、あなたの ためになるとは限らないのよ | |
| だからちゃんと テスト勉強は続けないとね | |
| はーい、わかりました | |
| (お母さんは、いつも優しくて 私はとっても大好きで…) | |
| (でも…よくわからないけど それとは別の感情もあって) | |
| (お母さんのことを思い出すと 胸がキューッと締め付けられる) | |
| (心臓がバクバクして 頭がフワフワ真っ白になる) | |
| (なんで?どうして?) | |
| (私、やっぱり何か 忘れてること、あるのかな?) | |
| ♪ Music stops. | |
| ♪ Musical track: Quamobrem? | |
| お帰りなさい、まばゆちゃん | |
| ただいまです、咲笑さん | |
| 今日は帰り、遅かったわね どこかお出かけ? | |
| まあ、そんなところです | |
| そう…ご飯、作ってあるから 温めて食べてちょうだいね | |
| はい、ありがとうございます | |
| ええと… | |
| 咲笑さん | |
| あ、なあに? | |
| いつも、ご心配おかけして スミマセン… | |
| でも、私は大丈夫なんで | |
| ええ…わかってるわ | |
| (ごまかしちゃって ごめんなさい、咲笑さん) | |
| (いつも優しくしてくれて すごく感謝しているんですが…) | |
| (私にとって お母さんは特別で…) | |
| (私ひとりで、ちゃんと 向き合いたいんです) | |
| ♪ Music stops. | |
Episode 7
| (Narration) テレビ | 「本日午前7時、突発的異常気象に 伴い避難指示が発令されました」 |
|---|---|
| (Narration) テレビ | 「付近にお住まいの皆さまは」 |
| (Narration) テレビ | 「速やかに最寄りの避難場所への 移動をお願いします」 |
| うへぇ…昨日までの天気予報じゃ 全然大丈夫だったのに… | |
| 異常気象ってヤツですね | |
| わかりましたー | |
| (表面上は、今までと同じ 仲良く暮らしているけれど…) | |
| (私と咲笑さんの関係は 相変わらずどこかぎこちない) | |
| (嫌ったり、疎んじたりしている わけじゃなくて…) | |
| (むしろお互いに尊重して 気を遣っている感じ) | |
| (だからかえって、問題が こんがらがっているのかも…) | |
| はーい | |
| ♪ Musical track: Anxiety | |
| おばあちゃん、良かったら この座布団使って下さいね | |
| ママー!どこー? | |
| 気分が悪くなった方は、すぐに 係の人にご連絡下さーい | |
| あらら、ずいぶん賑やかね | |
| 大ごとですね…これ以上 何もないといいのですけれど… | |
| まばゆちゃん、私、ちょっと お手伝いに行ってくるわね | |
| ひとりでも大丈夫? | |
| あ、はい 映画も持って来ましたし | |
| いつもボッチなんで 時間を潰すのは得意です! | |
| そ、そう… それじゃ、また後でね | |
| はーい | |
| (さて…と) | |
| (やることもないですし 早速映画でも観ますかね) | |
| (こんなこともあろうかと まとめて借りてて良かったー) | |
| (さて、それじゃあ何から 観始めますかね…) | |
| (尾道舞台の名作タイムトラベル 映画にしましょうか?) | |
| (あるいは、先に同原作の アニメ版を先に観ちゃう手も…) | |
| やだやだやだやだあああああ!! うちに帰るうううううううう!! | |
| こらっ!静かにしなさい! | |
| ここつまんない! つまんないいいいいいいいいい!! | |
| 駄々こねるんじゃない! ほら、皆うるさがってるんだぞ! | |
| 知らなーい!!帰るんだもーん!! お母さんのところに行くのーッ!! | |
| あ、あの… | |
| もし良かったら これ、使いますか? | |
| へ…?なに、この丸いの? | |
| ポチッと再生! | |
| わわっ、これ、アニメ? | |
| ポータブルビデオプレイヤーです | |
| これさえあれば、いつでも どこでも映画の世界にダイブ! | |
| つまんない日常とも オサラバですよ | |
| お姉ちゃん、これ、貸して! | |
| はい、どうぞどうぞ | |
| すみません…うちの息子が ご迷惑をかけて… | |
| い、いえいえ! 迷惑だなんてそんな | |
| 困ったときはお互い様ですし… | |
| いや、でも本当に助かりました 言いだしたら聞かないもんで… | |
| 本当に、隣町の病院まで つれて行かなきゃならないかと… | |
| 隣町の病院? | |
| はい、つい先日から 妻が盲腸で入院してて… | |
| 避難指示が出て、大きな病院に 転院できたのは良かったんですが… | |
| 病院… | |
| ♪ Music stops. | |
| 近づかないでって 言ったでしょう、まばゆ! | |
| あなたの顔が、見たくないの… | |
| ♪ Musical track: [ fateful #1] | |
| あっ… | |
| お、お母さん… そんな、そんなのって… | |
| あの…どうかしましたか? | |
| い、いえ…なんでもないです なんでも! | |
| それ、お貸ししますんで 楽しんで下さいね! | |
| はい、助かります | |
| …………ふぅ | |
| (さっきのは…何?) | |
| (お母さんが、私に向かって 怒鳴って、別人みたいで…) | |
| (あれは…夢?) | |
| (ううん、違う…) | |
| (あの場所は、お母さんが 入院した病院で…) | |
| (私は確かに あの光景を見たことがある) | |
| (でも、何があったの?) | |
| (どうして、忘れていたの?) | |
| (それもやっぱり 忘れた方がいいことなの…!?) | |
| ♪ Music stops. | |
| そんなわけ…あ… | |
| (また、時間が止まった…) | |
| ………… | |
| っ!! | |
| ♪ Musical track: Incertus | |
| (私、お母さんとの思い出を 忘れたくなんて、ない…!!) | |
| (もし、それが辛いことでも… それでも、私、どうしても…!) | |
| どうしても 思い出したいッ!! | |
| (Narration) Aio Mabayu | (嵐が近づく町を走って、時間は しばらく止まったままでした) |
| (Narration) Aio Mabayu | (それは、私が今まで経験した中で 一番の長さで…) |
| (Narration) Aio Mabayu | (私が病院にたどり着くのを 待っていたみたいでした) |
| ♪ Music stops. | |
Episode 8
| はぁっ…はぁっ…はぁっ… | |
| (Narration) Aio Mabayu | (今までずっと 思い出せなかったのに…) |
| (Narration) Aio Mabayu | (不思議と記憶は鮮明でした) |
| (Narration) Aio Mabayu | (お母さんが 入院していた病院…) |
| (Narration) Aio Mabayu | (お母さんが 最期の日を過ごした病室…) |
| (Narration) Aio Mabayu | (私は、時間の止まった病院の 階段を駆け上がって…) |
| ここだ…っ! | |
| ここに、私、前に お見舞いに、来て… | |
| それで、お母さんは… | |
| ♪ Musical track: [ fateful #1] | |
| 近づかないでって 言ったでしょう、まばゆ! | |
| 私は、死ぬの…運命なのよ それが視えてしまったの | |
| 私はもう…何も感じたくない | |
| このまま静かに… 消えていきたいのよ! | |
| だから…来ないでちょうだい | |
| お母さん、私を信じて | |
| 病気は絶対治るから 絶対に、治るから! | |
| だからまた昔みたいに 元気に占いの仕事をして… | |
| ………… | |
| お母さん? | |
| ……けるな | |
| お母さん?なにを… | |
| ふざけるなッ!! | |
| えっ… | |
| そんなこと、無理に決まってる! 私の占いは外れないの! | |
| 私の運命は定まってしまって もう、変えることはできない! | |
| もし変えられるなら、そんなの とっくの昔にやっていたわ! | |
| あなたの顔が、見たくないの… | |
| もう…私に辛い思いを させないでちょうだい…お願い | |
| ………… | |
| ああ…そうだ… | |
| 私…ずっと、忘れてた… | |
| お母さんは、自分が命を 失う未来を、視ちゃったんだ | |
| 自分の未来に怯えて まるで、人が変わったみたいに… | |
| 私のことなんて 忘れてしまったみたいに… | |
| 私は、それが怖くて… 受け止められなくて… | |
| だから、目を逸らしたんだ | |
| あんなに好きだった お母さんのことを… | |
| 心の中から 追い出しちゃったんだ… | |
| あはは… | |
| そりゃ…そうですよね… | |
| そんな、薄情者ですもん | |
| ボッチになっても 当たり前っていうか… | |
| 自業自得ですよ | |
| 私には、誰にも 愛される資格なんて… | |
| ♪ Music stops. | |
| え… | |
| ♪ Musical track: Confessio | |
| まばゆちゃん やっぱりここに居たのね | |
| 咲笑さん…! なんで、ここに…? | |
| ふふふ…まばゆちゃんが 考えてることは、わかるわよ | |
| 様子を見に戻ったら どこにも居なくて… | |
| まばゆちゃんのプレイヤーを 使ってる子が居たから | |
| お父さんに、話を聞いたの | |
| ああ、なるほど… | |
| まばゆちゃん最近、お母さんの ことで悩んでいたでしょう? | |
| もしどこかに行くなら この場所かなって | |
| 咲笑さんは、なんでも お見通しですね | |
| お見舞いに来たときも 咲笑さんと一緒でしたもんね | |
| まばゆちゃん | |
| あの時のお母さんは あなたを嫌ったわけじゃなくて… | |
| ええ、そうです お母さんは、優しい人でした | |
| 変えてしまったのは私です | |
| 私が居なかったら…お母さんは あんなふうにはならなかった | |
| みんな、私のせいなんです | |
| ♪ Music stops. | |
Episode 9
| ♪ Musical track: Amicae Carae Meae | |
|---|---|
| ねえ、お母さん? | |
| なあに、まばゆ? | |
| お母さんは 未来が視えるんだよね | |
| ええ、調子がいいときはね | |
| それ、すごいね! | |
| ええ、これはね 私が神様から授かった力なの | |
| この力があるおかげで 私は皆の役に立てるのよ | |
| もし私が、この力を失ったら 困ってしまうかもしれないわね | |
| それじゃあ、未来を変えたら どうなるの? | |
| ううん、残念だけれど 未来は変わらないの | |
| なんで? | |
| さあ、どうしてかしらね? 私にもわからないわ | |
| でもね、どれだけ努力をしても 未来は変わらない… | |
| もしかしたら運命は、最初から 決まっているのかもね | |
| でもお母さん 占いをしてるんだよね? | |
| 嫌な未来が視えて、変えられ なかったら、どうするの? | |
| そんな未来、知っても 嫌な気持ちになるだけだよね? | |
| ええ、そうね | |
| だからそういうときは そっと胸の奥にしまっておくの | |
| 胸の奥に…? | |
| 伝えるのはいいことだけ お互いにとって、幸せでしょ? | |
| …苦しくないの? | |
| えっ…? | |
| お母さんの胸の中には、誰にも 言えない不幸が詰まってて… | |
| それって、なんだか苦しそう | |
| 人の未来を預かるのは、とても 苦しくて、責任のあることだわ | |
| だから時々は辛くもなる | |
| でも…私はこの仕事に誇りを 持っているわ | |
| 未来を視るこの力は 私の人生そのものなの | |
| 人生、そのもの…? | |
| 心配してくれて、ありがとう | |
| まばゆみたいな優しい娘がいて 私は幸せだわ | |
| お母さん… | |
| ♪ Music stops. | |
| え… | |
| 嘘… | |
| …お母さん? | |
| ♪ Musical track: [ fateful #1] | |
| やめて… | |
| お母さん、どうしたの? | |
| お願い、来ないで! | |
| え… | |
| 視えた… | |
| 視えて、しまったの…!! | |
| あの時…お母さんは 私の未来を視たんです | |
| 私が、お母さんの死を 経験する、未来を | |
| だから、もし、あの時 私がそばにいなければ… | |
| お母さんは、自分の運命を 知ることはなかった | |
| 死に怯えて、あんなに 苦しむ事もなかったんです! | |
| お母さんは、私のせいで… | |
| 違う あなたのせいじゃないわ | |
| そんな気休めは、要らないです | |
| 気休めなんかじゃない | |
| まばゆちゃん、良く聞いて | |
| ♪ Music stops. | |
| あなたは、お母さんの 希望だったのよ | |
| …希望? | |
| ♪ Musical track: [ mother and daughter] | |
| あなたのお母さんが自分の未来を 視たのは、それが初めてじゃない | |
| それまでにも何度も 自分の未来を視ていたわ | |
| 不意に近くの人の未来が視えて 自分の運命がわかってしまう | |
| それは、避けようのない ことだったのよ | |
| 嬉しいことも視えれば 悲しいことだって視える | |
| 中には、自分の大切な人を失う 未来が、視えることだってあった | |
| あ…それって、もしかして… | |
| お父さんの、未来も? | |
| ええ、そうよ | |
| あなたのお母さんは、必死に 未来を変えようとした | |
| お父さんが巻き込まれる事故を 防ごうとしたのよ、でも… | |
| 変えられなかった | |
| 愛おしい人たちの死を ただ見送ることしかできなかった | |
| それが…彼女が視る未来の 絶対のルールだったから | |
| そんな… | |
| その時、あなたのお母さんは 絶望に沈んだわ | |
| 周囲に当たり散らして 自分の力を呪った | |
| 未来を変えることができないのに 予知に何の意味があるんだって | |
| 愛する人を救えずに 生きている意味なんてないって | |
| そんな、お母さんの苦しみを 救ったのが… | |
| まばゆちゃん あなただったのよ | |
| 私…? | |
| ええ | |
| あなたの居る未来が お母さんの生きる意味だった | |
| あなたの命こそが まばゆい未来の希望だった | |
| だから… | |
| 自分の死で、その希望を 手放すときに、お母さんは… | |
| 我を失ってしまうくらい 辛い思いをすることになったの | |
| あなたが悪いわけじゃない あなたが嫌いだったわけじゃない | |
| むしろ逆で… | |
| あなたが大好きだったから 苦しんだのよ | |
| お母さん… | |
| でも…だったら、やっぱり… | |
| 私がそばにいなければ… 未来を視せたりしなければ… | |
| まばゆちゃんは、そのショックが 大きくて、覚えていないかしら | |
| なにを、ですか? | |
| お医者さんは、化学治療の 副作用と言っていたけれど… | |
| 最期の頃のお母さんは、どうやら 記憶を失っていたみたいなの | |
| あ… | |
| あら、まばゆ いらっしゃい | |
| お母さん…? | |
| 大丈夫…? 気分は、悪くない? | |
| 悪くないどころか 曇り空が晴れたみたい | |
| 心配かけちゃって ゴメンなさいね | |
| すぐに病気を治して 元気なお母さんに戻るから! | |
| お…お、お… | |
| お母さんっ!! | |
| ん?なあに?泣いてるの? | |
| ふふふ、大丈夫よ だってまばゆは、強い子でしょう | |
| だって、どんな運命にも負けない 私の希望なんだもの | |
| そうだった… | |
| 私、お母さんと 最期に、この部屋で… | |
| まばゆちゃん、聞いて | |
| 咲笑さん…? | |
| 辛いことがあっても 苦しいことがあっても… | |
| あなたを愛する人は あなたのそばに、確かにいるし… | |
| 例え、その人が遠くなっても 記憶から薄れてしまっても… | |
| あなたがここにいることは とても意味のあることなのよ | |
| …うん | |
| ♪ Music stops. | |
Episode 10
| ♪ Musical track: Amicae Carae Meae | |
|---|---|
| 遠くから、音が… | |
| 町の中心部は危ないみたいね | |
| 今日はこのまま、ここに 避難させてもらいましょう | |
| はい、それがいいと思います | |
| それじゃ、私はボランティアの お手伝いに行ってくるから | |
| 今度は、ひとりでどこかに 行ったりしないでよ | |
| はーい | |
| 咲笑さんも、あんまり 無理しないでくださいね | |
| はいはい、わかってます | |
| (といっても、ちょっとは 無理しちゃうんだろうなあ) | |
| (私を探しに、当てもなく 嵐の中に飛び出すくらいだし) | |
| (今度は私が、咲笑さんを 助けてあげなきゃ!) | |
| (もうこれ以上、心配なんて かけられないですからね!) | |
| ♪ Music stops. | |
| あ、また時間が… | |
| (全く、なんなんですかね 私のこの力…) | |
| (やっぱり、お母さんの占いと 何か関係があるんでしょうか?) | |
| (私、まだまだ何かを 忘れてしまっていて…) | |
| ………… | |
| (でも、まあ…) | |
| ♪ Musical track: Pergo Pugnare | |
| (それも、悪くはないのかも しれませんね) | |
| (お母さんが、笑顔で最期を 迎えられたのも…) | |
| (優しい忘却があったからで…) | |
| きっと、意味がある | |
| えっ!? | |
| (急に、空が晴れた?) | |
| (なんだろう あの眩しい光は…?) | |
| (不思議と心が温かくなって…) | |
| なんだか、不思議と 笑顔になっちゃいますね… | |
| にひひひひ | |
| ♪ Music stops. | |