The Beginning Story: Episode 3

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Part A

口恭介の病室 ベッドをリクライニングさせて座っている恭介と、介添川の椅子に腰掛けているさやか。 さやか「はい、これ」 見舞いに来たさやかから、ヴァイオリンのCDを手渡される恭介。驚きに日を見聞く。 恭介「うわ、凄い...これネットでも手に入らない廃盤だよ!」 さやか「そ、そうなんだ...たまたま寄ったお店で見かけたんで、買ってみたんだけど」 ベッドサイドのテーブルには、他にもCDのケースが積み上げられている。すべてさやかが買ってきたものである。 恭介「いつも、本当にありがとう。さやかはレアなCDを見つける天才だね」 さやか「はは、そんな...う、運がいいだけだよ。きっと」 照れてはにかむさやか。 恭介はさっそくケースを開けて、CDをポータブルプ レーャーにセットする。 恭介「この人の演奏は、本当に凄いんだ。さやかも聴いてみる?」 ヘッドホンの片方だけを嵌めて、もう一方をさやかに差し山す恭介。 さやか「ぃ、いいのかな...」 恭介「本当はスピーカーで聴かせたいんだけど、病院だしね」 コードの長さの都合で、やや身を寄せ合う姿勢になる二人。内心で照れまくるさやか。 だが山曲が始まると、優しい旋律に心が利まされる。 優しい旋律に浸るさやか。 x x x さやか幼少期の記憶。 ヴァイオリンの発表会で楓爽と演奏をしている恭介と、その姿に目を奪われているさやか。 × x x ふと目を開けるさやか。隣で恭介が静かに泣いているのに気付く。 ベッドの上で力なく投げ出された恭介の左腕。無惨な手術跡。もう二度と演奏のできなくなった指が、演奏の記憶を辿って震えている。 やるせない惣いに、胸が痛くなるきゃか。

口夜の公園(異界化中) 魔砲からアルティマシュートを放つマミ。 直撃をくらい、悲鳴を上げて消滅していく使い魔。 それを固唾を呑んで見守るまどかとさやか。 結界は解かれ、周囲はもとの公園の景色に戻る。マミも変身を解除。ほっと安堵するギャラリー二人。 さやか「やっぱマミさんつてカツコいいね~」 マミ「もう。見せ物じゃないのよ。危ないことしてる、って意識は忘れないでおいてほしいわ」 さやか「いえーす」 手にした護身用パットを掲げ上げるさやか。 まどか「グリーフシード、落とさなかったね」 キユウべえ「今のは魔女から分裂した使い魔でしかないからね。グリーフシードは持つてないよ」 まどか「魔女じゃなかったんだ...」 さやか「なんか、ここんとこずっとハズレだよねえ」 マミ「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば分裂元と同じ魔女になるから。ーーさ、行きましょ」 × × × 静寂を取り戻した夜の公園を、並んで歩くマミ、さやか、まどかとキユウベえ。 マミ「二人とも、何か願い事は見つかった?」 さやか「う~ん、まどかは?」 まどか「う~ん...」 困リ果てる二人に、苦笑するマミ。 マミ「まあ、そういうものよね。いざ考えろって言われたら」 まどか「マミさんは、どんな願い事をしたんですか?」 まどかが訊いた途端、マミの表情が陰る。やや慌てるまどか。 まどか「いや、あの、どうしても聞きたいってわけじゃなくて、ちょっと気になった、っていうか、その...」 マミ「ううん、いいの。別に隠すほどのことでもないし」 遠い眼差しで追憶するマミ。 マミ「私の場合はーー」 x x × マミの回想。高速道路での大規模な事故。 潰れた車に閉じ込められて瀕死のマミが、手を差し伸べたその先に、キユウベえの姿がある。 マミoff「ーー考えている余裕さえ、なかったってだけ」 × x × 再び現代。夜の公園。マミが語った過去に、ややショックを受けている二人。 マミ「ーー後悔してるわけじゃないのよ。今の生き方も、あそこで死んじゃうよりは余程良かったと思ってる」 マミ「でもね、ちゃんと選択の余地がある子には、きちんと考えた上で決めてほしいの。私にできなかったことだからこそ、ね」 意を決して、質問をぶつける気になるさやか。 さやか「ねえ、マくさん...願い事つて、自分のための事柄でなきや駄目なのかな?」 マミ「ぇ?」 さやか「たとえばーーたとえばの話なんだけどさ。あたしなんかより、よほど困ってる人がいて、その人のために願い事をするのはーー」 まどか「それって...上条くんのこと?」 さやか「た、例え話だって言ってるじゃんか!」 慌てるさやかを余所に、冷静に頷くキユウベえ。 キユウベえ「べつに契約者自身が願い事の対象になる必然性はないんだけどね。前例もないわけじゃないし」 マミ「...でも、あまり感心できた話じゃないわ」 やや険しい声で異論を挿むマミ。 マミ「他の人の願いを叶えるのなら、なおのことれ分の望みをはっきりさせておかないと。ーー美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」 さやか「...」 マミの言い様に、さすがに憮然と押し黙るさやか。狼狽えるまどか。 まどか「マミさんーー」 マミ「同じようでも全然違うことよ。これ」 さやか「...その言い方は、ちょっと酷いと思う」 マミ「ごめんね。でも今のうちに言っておかないと。そこを履き違えたまま先に進んだら、あなた、きっと後悔するから」 さやか「...」 さやか、しばし押し黙って考え込んでから、深呼吸し、領く。 さやか「...そうだね。あたしの考えが甘かった。ごめん」 きっぱりと謝罪するさやかに、安堵するまどか。マミも笑顔を返す。 マミ「やっぱり、難しい事柄よね。焦って決めるべきじゃないわ」 キユウベえ「僕としては、早ければ早いほどいいんだけど」 ぼやくキユウべえの頭を小突くマミ。 マミ「駄目ょ。女の子を急かす男は嫌われるぞ」 笑うマミとさやか。まどかも釣られて笑うものの、その胸の内はやや複雑。

口まどかの部屋 就寝間際、パジャマに着替えてベッドの上でごろごろしているまどか。傍らにはキユウベえ。 公園でのさやかとマミの問答を思い出し、溜息をつくまどか。 まどか「...やっぱり、簡単なことじゃないんだよね...」 キュゥベえ「僕の立場で急かすわけにはいかないしね。助言するのもルール違反だし」 まどか「ただ、なりたいってだけじゃ、駄目なのかな...」 ノートの落書きの変身プランを眺めるまどか。華麗に戦うマミを思い出し、その姿に自分を重ねて妄想する。 キユウベえ「まどかは力そのものに憧れているのかい?」 まどか「ゃ、そんなんじゃなくて...う~ん、そうなのかな?私ってどんくさいし、何の取り柄もないし、だからマミさんみたいに格好良くて素敵な人になれたら、それだけでもう充分に幸せなんだけど...」 キユウベえ「まどかが魔法少女になれば、マミよりずっと強くなれるよ」 まどか「へ?」 思わぬ言葉に、狐につままれたかのようなまどか。 キユウベえ「もちろん、どんな願い事で契約をするかにもよるけれど...まどかが生み出すかもしれないソウルジエムの大きさは、僕にも測定しきれない。これだけの素質を持つ子と出会ったのは初めてだ」 まどか「はは...何言ってるのよ、もう。嘘でしょ」 キユウべえ「いやーー」 そこに扉をノックする音。 知久「まどか、起きてるか?」 まどか「うん?どしたの?」 知久「ママが帰ってきたんだが...ちょっと手伝ってくれないかな」

口鹿り一家玄関 上がり枢で、泥酔した詢子が潰れている。 まどか「あー、またか...まったくもう」 やや呆れ気味に苦笑いするまどか。 詢子「み、水...」 既に川意しであったコップの水を詢子に飲ませる知久。 知久「ともかくベッドまで運んで、着替えさせないと。ほら、そっち持ってくれ」 まどかと知久、二人がかりで詢子を肩に担いで、寝室まで引っ張っていく。 詢子「ぐえええ...このスダレハゲ...呑みたきゃ手酌でやってろっつ、つの...」 譫言のように愚痴を漏らす詢子。

口両親の寝室 布団にくるまり、安らかな寝息を立てている詢子。 一仕事終えた知久とまどか、ほっと一息。 知久「ココアでも入れようか?」 まどか「うん、お願い」

ロダイニングキヴチン 寝間着姿にガウンを羽織り、テーブルで差し向かいに座ってホットココアを啜る二人。 まどか「なんでママは、あんなに仕事が好きなのかな。昔からあの会社で働くのが夢だったーーなんて、ないよね?」 知久「ママは仕事が好きなんじゃなくて、頑張るのが好きなのさ」 まどか「...?」 知久「嫌なことも辛いこともいっぱいあるだろうけど、それを乗り越えたときの満足感が、ママにとっては最高の宝物なのさ。そういう意味で、今の難しくて大変な仕事は、とてもやり甲斐があるんだろうね」 まどか「ママは...満足なのかな、それで」 知久「そりゃ、会社勤めが夢だったわけじゃないだろうけどさ。それでもママは、理想と思っていた生き方を通してる。そんな風にして叶える夢もあるんだよ」 まどか「...生き方そのものを、夢にするの?」 知久「どう思うかは人それぞれだろうけどーー僕はね、ママのそういうところが大好きだ。尊敬できるし、自慢できる。素晴らしい人だってね」 まどか「...うん」 父の笑顔に、表情を和ませるまどか。

口夜道 まどか、さやかと別れて帰路を歩くマミ。ふと背後についてくる気配を感じ、足を止める。 街灯の光を避けるように、闇の中に佇んでいるほむら。 ほむら「分かっているの?あなたは無関係な一般人を危険に巻き込んでいる」 マミ「彼女たちはキユウベえに選ばれたのよ。もう無関係じゃないわ」 ほむら「あなたは二人を魔法少女に誘導している」 マミ「それが面白くないわけ?」 ほむら「ええ。迷感よ。...特に鹿目まどか」 マミ、ほむらの真意を見透かし(たと勘違いして)日を細める。 マミ「ふうん...そう、あなたも気付いてたのね、あの子の素質に」 ほむらの眼差しがさらに険しくなる。 ほむら「彼女だけは、契約させるわけにはいかない」 マミ「自分より強い相手は邪魔者ってわけ?いじめられつ子の発想ね」 内心でかっとなるほむらだが、一旦目を閉じて気持ちを静める。 ほむら「あなたとは戦いたくないのだけれど」 マミ「なら二度と会うことがないよう努力して」 ほむらの側にこの場で仕掛けてくる意図がないと判断したマミは、踵を返す。 マミ「話し合いだけで事が済むのは、きっと今夜で最後だろうから」 捨て台詞を残して去っていくマミ。ほむらは事態が思うように進まないことに苛立ち、歯噛みする。 ほむら「...」

口封院ロビー(翌日、放課後) 恭介が入院している病院。さやかの見舞いに付き添って来たまどかが、ペンチでさやかの戻リを待っている。隣にはキユウベえ。 そこで溜息をつきつつエレベーターから降りてくるさやか。 さやか「ょ、お待たせ」 まどか「あれ? ...上条くん、逢えなかったの?」 さやか「なんか今日は都合悪いみたいでさ。わざわざ来てやったのに、失礼しちゃうわよね~」

口病院・訴の駐輪場 連れ立つて、病院の中庭を横切るまどかとさやか。 ふと気になって、駐輪場の奥にある物置のスペースに目をやるまどか。 そこで何かが怪しく光っている。 まどか「...?」 さやか「ん? どしたの?」 まどか「あそこ、何か...」 胸騒ぎを感じて、近寄って調べる二人。 そこには、壁に突き刺さるようにして埋まっているグリーフシード。まるで呼吸するかのように光を脈動させている。 キユウベえ「グリーフシードだ...孵化しかかってる!」 まどか「嘘、なんでこんな所に...」 キユウベえ「まずいよ。早く逃げないと。この辺りはもうこいつの魔力に侵食されはじめてる。もうすぐ結界が出来上がる」 さやか「またあの迷路が...」 さやかの脳裏を、かつてマミから聞いた言葉が過ぎる。 x x x マミ「...それから、病院とかに取り憑かれると最悪よ。ただでさえ弱っている人たちから生命力が吸い上げられるから、日も当てられないことになる」 × × × これは断じて見過ごせないと、意を決するさやか。 さやか「まどか、先に行って。マミさんを呼んできて。あたしはこいつを見張ってる」 まどか「そんな!」 キユウベえ「無茶だよ。中の魔女が出てくるまでにはまだ時間があるけど、結界が閉じたら君は外に出られなくなる。マミの助けが間に合うかどうかーー」 さやか「あの迷路が出来上がったら、こいつの居所も分からなくなっちゃ、つんでしょ?」 さやかの脳裂を過ぎる、衰弱した恭介のイメージ。 さやか「放つておけないよ。こんな場所で...」 さやかの決意を察して、頷くキユウベえ。まどかの肩から降りる。 キユウベえ「まどか、先に行ってくれ。さやかには僕がついてる」 まどか「キユウべえ...」 キユウベえ「マミならテレパシーで僕の位置が解る。ここでさやかと一緒にグリーフシードを見張っていれば、最短距離で結界を抜けられるよう、マミを誘導できるから」 さやか「ありがとう。キユウベえ」 まどか「...あたし、すぐにマミさんを連れてくるから!」 走り去るまどか。さやかとキユウベえの周囲は徐々に異界化し、現実枇界と隔てられていく。 駐輪場を出る前に、振り返ってさやかたちがいた辺りを見るまどか。そこは既に不気味な静寂に包まれて、誰もいない。 x x x 病院の屋上に立っているほむら。 駐輪場から駆け出ていくまどかを、無言で見守っている。

Part B

口結界内部 脈動するグリーフシードを前にして、キユウベえを抱きかかえているさやか。 キユウベえ「恐いかい? さやか」 さやか「そりゃあまあ...当然でしょ」 キユウベえ「願い事さえ決めてくれれば、今この場で君を魔法少女にしてあげることもできるんだけど」 さやか「うん、いざとなったら頼むかも。...でも、今はやめとく。マミさんを待つよ」 弱気になりそうな自分を奮い立たせようと、深呼吸するさやか。 さやか「あたしにとっても、大事なことだから。...できる