The Beginning Story: Episode 5: Difference between revisions

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==Part A==
==Part A==


口病院屋上
{| border="1" cellpadding="5" cellspacing="1" style="border-collapse: collapse; border-color: #ddd; margin-top: 20px;"
夕陽の中、キユウベえと向き合って対峙するさやか。
! colspan="2" width="50%" |
さやか「本当に、どんな願いでも叶うんだね...」
! width="50%" |病院屋上
キユウベえ「大丈夫。君の祈りは間違いなく遂げられる。じゃあ、いいんだね?」
|-
さやか「うん。やって」
| colspan="2"|
キユウべえ、手を差し伸べてさやかの胸に触れる。
|夕陽の中、キユウベえと向き合って対峙するさやか。
さやか「...ッ!」
|-
痛みに似た衝撃に身を震わせるさやか。
|
キユウベえが手を離すと、さやかの心臓の位置れから、ゆっくりと光る球が浮かび上がり、空中に浮遊する。さやかのソウルジエム。
|さやか「本当に、どんな願いでも叶うんだね...」
出現した宝石を、恐る恐る、両手で掴み取るさやか。
|-
キユウベえ「さあ、受け入れるといい。それが君の運命だ」
|
さやか「...」
|キユウベえ「大丈夫。君の祈りは間違いなく遂げられる。じゃあ、いいんだね?」
決意に表情を引き締め、頷くさやか。
|-
|
|さやか「うん。やって」
|-
| colspan="2"|
|キユウべえ、手を差し伸べてさやかの胸に触れる。
|-
|
|さやか「...ッ!」
|-
| colspan="2"|
|痛みに似た衝撃に身を震わせるさやか。
|-
| colspan="2"|
|キユウベえが手を離すと、さやかの心臓の位置れから、ゆっくりと光る球が浮かび上がり、空中に浮遊する。さやかのソウルジエム。
|-
| colspan="2"|
|出現した宝石を、恐る恐る、両手で掴み取るさやか。
|-
|
|キユウベえ「さあ、受け入れるといい。それが君の運命だ」
|-
|
|さやか「...」
|-
| colspan="2"|
|決意に表情を引き締め、頷くさやか。
|-
|}


口朝の教室
{| border="1" cellpadding="5" cellspacing="1" style="border-collapse: collapse; border-color: #ddd; margin-top: 20px;"
朝のHR前、漫然と談笑している生徒たち。
! colspan="2" width="50%" |
仁美の机に、さやかとまどかが屯している。
! width="50%" |朝の教室
ふわ、と欠伸をする仁美。
|-
仁美「ああ、はしたない...ごめんあそばせ」
| colspan="2"|
さやか「どうしたのよ仁美?寝不足?」
|朝のHR前、漫然と談笑している生徒たち。
仁美「ええ。ゆうべは病院やら警察やらで夜遅くまで...」
|-
まどか「...」
| colspan="2"|
息を呑みそうになるまどか。だがさやかは素知らぬ顔で続ける。
|仁美の机に、さやかとまどかが屯している。
さやか「え~? 何かあったの?」
|-
仁美「なんだか私、夢遊病っていうのか...それも同じような症状の人が大勢いて、気がついたらみんなで同じ場所に倒れていたんですの」
| colspan="2"|
さやか「はあ?何ソレ?」
|ふわ、と欠伸をする仁美。
仁美「お医者様は集団幻覚だとか何とか...今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの。ああ、面倒臭いわ・・・・・」
|-
さやか「そんなことなら学校休んじゃえば良かったのに」
|
仁美「駄目ですわ。それではまるで本当に病気みたいで、家の者がますます心配してしまいますもの」
|仁美「ああ、はしたない...ごめんあそばせ」
さやか「さっすが優等生。体いわあ」
|-
まどか「...」
|
からからと笑うさやか。まどかはそこまで厚顏に上辺を繕えず、決まり悪く沈黙する。
|さやか「どうしたのよ仁美?寝不足?」
ほむら「...」
|-
そんな二人を、やや離れた席から、無表情に観察しているほむら。
|
|仁美「ええ。ゆうべは病院やら警察やらで夜遅くまで...」
|-
|
|まどか「...」
|-
| colspan="2"|
|息を呑みそうになるまどか。だがさやかは素知らぬ顔で続ける。
|-
|
|さやか「え~? 何かあったの?」
|-
|
|仁美「なんだか私、夢遊病っていうのか...それも同じような症状の人が大勢いて、気がついたらみんなで同じ場所に倒れていたんですの」
|-
|
|さやか「はあ?何ソレ?」
|-
|
|仁美「お医者様は集団幻覚だとか何とか...今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの。ああ、面倒臭いわ・・・・・」
|-
|
|さやか「そんなことなら学校休んじゃえば良かったのに」
|-
|
|仁美「駄目ですわ。それではまるで本当に病気みたいで、家の者がますます心配してしまいますもの」
|-
|
|さやか「さっすが優等生。体いわあ」
|-
|
|まどか「...」
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| colspan="2"|
|からからと笑うさやか。まどかはそこまで厚顏に上辺を繕えず、決まり悪く沈黙する。
|-
|
|ほむら「...」
|-
| colspan="2"|
|そんな二人を、やや離れた席から、無表情に観察しているほむら。
|-
|}


口河原の土手
{| border="1" cellpadding="5" cellspacing="1" style="border-collapse: collapse; border-color: #ddd; margin-top: 20px;"
放課後(士曜なので半ドンです)、土手の芝生に寝転がって青空を見上げているさやか。隣に座っているまどか。
! colspan="2" width="50%" |
さやか「んーツ、久々に気分いいわぁ。爽快爽快ッ!」
! width="50%" |河原の土手
まどか「さやかちゃんはさ、...恐くは、ないの?」
|-
さやか「ん? そりゃ、ちょっとは恐いけど。まあ昨日のヤツにはあっさり勝てたし」
| colspan="2"|
あくまで笑顔のさやか。が、やや真面目な声で続ける。
|放課後(士曜なので半ドンです)、土手の芝生に寝転がって青空を見上げているさやか。隣に座っているまどか。
さやか「もしかしたらまどかと仁美とーー友達二人も同時に亡くしたかもしれないって、そっちの方がよっぽど恐いよね」
|-
まどか「...」
|
さやか「だ・か・らツ」
|さやか「んーツ、久々に気分いいわぁ。爽快爽快ッ!」
身体を起こし、ピシッ、と格好つけてソウルジエムを構えて見せるさやか。
|-
さやか「何?っかな。自信? 安心感?ちょっと自分を褒めちやいたい気分つうかね。まー舞い上がっちゃってますねーあたし。これからも見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン護リまくっちゃいますからねー」
|
さやかが一人でテンションを上げまくる一方で、まどかはいまいち素直に笑えない。
|まどか「さやかちゃんはさ、...恐くは、ないの?」
まどか「後悔とか、ぜんぜんないの?」
|-
さやか「そーねえ...後悔っていえば、迷ってたことが後悔かな」
|
苦笑いしつつ、ややシリアスに過去を顧みてしまうさやか。
|さやか「ん? そりゃ、ちょっとは恐いけど。まあ昨日のヤツにはあっさり勝てたし」
さやか「どうせだったら、もうちょっと早く、心を決めるべきだったな、って」
|-
まどか「...」
| colspan="2"|
まどかとさやか、共に思い出すのは、三話でのマミの最期。
|あくまで笑顔のさやか。が、やや真面目な声で続ける。
さやか「あのときの魔女、あたしと二人がかりで戦ってたら、マミさんも死なないで済んだかもしれない」
|-
まどか「わたし...」
|
まどか、マミの最後の戦いの前に、魔法少女になることを誓けったことを思い山す。魔法少女への道を志したのは、実はさやかよりまどかの方が先だったのだ。
|さやか「もしかしたらまどかと仁美とーー友達二人も同時に亡くしたかもしれないって、そっちの方がよっぽど恐いよね」
まどか「...」
|-
責められるべきは自分だ、と悔恨に泣きそうになるまどか。
|
そんなまどかの肩を、励ましの笑顔でこづくさやか。
|まどか「...」
さやか「さては、なんか変なこと考えてるな?」
|-
まどか「...わたし...わたしだって...」
|
さやか「なっちゃった後だから言えるの。こーゅーことは」
|さやか「だ・か・らツ」
まどかの葛藤を和らげるために、あえて気安い口調で言い放つさやか。
|-
さやか「『どうせなら」っていうのがミソなのよ。あたしはさ、なるべくして魔法少女になったわけ」
| colspan="2"|
まどか「さやかちゃん...」
|身体を起こし、ピシッ、と格好つけてソウルジエムを構えて見せるさやか。
さやか「願い事、見つけたんだもの。命懸けで戦う羽目になったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎた、っていうのが、ちょっと悔しいだけでさ...」
|-
まどかに、にっこりと微笑みかけるさやか。
|
さやか「だから、引け目なんて感じなくていいんだよ。まどかは魔法少女にならずにすんだっていう、ただそれだけのことなんだから」
|さやか「何?っかな。自信? 安心感?ちょっと自分を褒めちやいたい気分つうかね。まー舞い上がっちゃってますねーあたし。これからも見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン護リまくっちゃいますからねー」
まどか「...」
|-
素直に納得はできないものの、ともかく領くまどか。
| colspan="2"|
さやかは立ち上がり、気持ちよさそうに伸びをする。
|さやかが一人でテンションを上げまくる一方で、まどかはいまいち素直に笑えない。
さやか「ん~っ、さて、と。じゃあそろそろ、あたしは行かないと」
|-
まどか「? 何か用事があるの?」
|
さやか「まあ。ちょっと、ね」
|まどか「後悔とか、ぜんぜんないの?」
何やら浮かれた表情のさやか。
|-
|
|さやか「そーねえ...後悔っていえば、迷ってたことが後悔かな」
|-
| colspan="2"|
|苦笑いしつつ、ややシリアスに過去を顧みてしまうさやか。
|-
|
|さやか「どうせだったら、もうちょっと早く、心を決めるべきだったな、って」
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|まどか「...」
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| colspan="2"|
|まどかとさやか、共に思い出すのは、三話でのマミの最期。
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|
|さやか「あのときの魔女、あたしと二人がかりで戦ってたら、マミさんも死なないで済んだかもしれない」
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|
|まどか「わたし...」
|-
| colspan="2"|
|まどか、マミの最後の戦いの前に、魔法少女になることを誓けったことを思い山す。魔法少女への道を志したのは、実はさやかよりまどかの方が先だったのだ。
|-
|
|まどか「...」
|-
| colspan="2"|
|責められるべきは自分だ、と悔恨に泣きそうになるまどか。
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| colspan="2"|
|そんなまどかの肩を、励ましの笑顔でこづくさやか。
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|
|さやか「さては、なんか変なこと考えてるな?」
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|まどか「...わたし...わたしだって...」
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|さやか「なっちゃった後だから言えるの。こーゅーことは」
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|まどかの葛藤を和らげるために、あえて気安い口調で言い放つさやか。
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|さやか「『どうせなら」っていうのがミソなのよ。あたしはさ、なるべくして魔法少女になったわけ」
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|まどか「さやかちゃん...」
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|さやか「願い事、見つけたんだもの。命懸けで戦う羽目になったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎた、っていうのが、ちょっと悔しいだけでさ...」
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|まどかに、にっこりと微笑みかけるさやか。
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|さやか「だから、引け目なんて感じなくていいんだよ。まどかは魔法少女にならずにすんだっていう、ただそれだけのことなんだから」
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|まどか「...」
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|素直に納得はできないものの、ともかく領くまどか。
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| colspan="2"|
|さやかは立ち上がり、気持ちよさそうに伸びをする。
|-
|
|さやか「ん~っ、さて、と。じゃあそろそろ、あたしは行かないと」
|-
|
|まどか「? 何か用事があるの?」
|-
|
|さやか「まあ。ちょっと、ね」
|-
| colspan="2"|
|何やら浮かれた表情のさやか。
|-
|}


口恭介の病室
{| border="1" cellpadding="5" cellspacing="1" style="border-collapse: collapse; border-color: #ddd; margin-top: 20px;"
見舞いに来ているさやか。恭介は以前より明らかに血色がいい。
! colspan="2" width="50%" |
さやか「そっか。退院はまだなんだ...」
! width="50%" |恭介の病室
恭介「足のリハビリがまだ済んでないしね。ちゃんと歩けるようになってからでないと」
|-
不思議そうに、全治した左手をしげしげと眺める恭介。
| colspan="2"|
恭介「手の方も、いったいどうして急に治ったのか、まったく理由が分からないんだってき。だからもうしばらく、精密検査がいるんだって」
|見舞いに来ているさやか。恭介は以前より明らかに血色がいい。
|-
|
|さやか「そっか。退院はまだなんだ...」
|-
|
|恭介「足のリハビリがまだ済んでないしね。ちゃんと歩けるようになってからでないと」
|-
| colspan="2"|
|不思議そうに、全治した左手をしげしげと眺める恭介。
|-
|
|恭介「手の方も、いったいどうして急に治ったのか、まったく理由が分からないんだってき。だからもうしばらく、精密検査がいるんだって」
さやか「恭介自身は、どうなの?どっか身体におかしなとこ、ある?」
さやか「恭介自身は、どうなの?どっか身体におかしなとこ、ある?」
恭介「いや、なさすぎて恐いっていうか...事故に遭ったのさえ悪い夢だったみたいに思えてくる。なんで僕、こんなベッドに寝てるのかな、って。...さやかが言った通り、奇跡だよね、これ」
|-
気まずげに目を伏せる恭介。
|
さやか「ん?どしたの?」
|恭介「いや、なさすぎて恐いっていうか...事故に遭ったのさえ悪い夢だったみたいに思えてくる。なんで僕、こんなベッドに寝てるのかな、って。...さやかが言った通り、奇跡だよね、これ」
恭介「さやかには...酷いこと、言っちゃったよね。いくら気が滅入ってたとはいえ...」
|-
にこやかに笑い飛ばすさやか。
| colspan="2"|
さやか「変なこと思い山さなくていーの。今の恭介は大喜びしてて当然なんだから。そんな顔してちゃ駄目だよ」
|気まずげに目を伏せる恭介。
恭介「うん。...なんか、実感なくてさ」
|-
さやか「まあ、無理もないよね」
|
ちらり、と腕時計を確かめるさやか。
|さやか「ん?どしたの?」
さやか「うん、そろそろかな」
|-
恭介「?」
|
さやか「恭介、ちょっと外の空気、吸いに行こ」
|恭介「さやかには...酷いこと、言っちゃったよね。いくら気が滅入ってたとはいえ...」
|-
| colspan="2"|
|にこやかに笑い飛ばすさやか。
|-
|
|さやか「変なこと思い山さなくていーの。今の恭介は大喜びしてて当然なんだから。そんな顔してちゃ駄目だよ」
|-
|
|恭介「うん。...なんか、実感なくてさ」
|-
|
|さやか「まあ、無理もないよね」
|-
| colspan="2"|
|ちらり、と腕時計を確かめるさやか。
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|
|さやか「うん、そろそろかな」
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|恭介「?」
|-
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|さやか「恭介、ちょっと外の空気、吸いに行こ」
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|}


口病院エレベーター
{| border="1" cellpadding="5" cellspacing="1" style="border-collapse: collapse; border-color: #ddd; margin-top: 20px;"
車椅子に乗せた恭介を押して、エレベーターに乗り込むさやか。
! colspan="2" width="50%" |
屋上の行き先ボタンを押す。やや不思議そうな恭介。
! width="50%" |病院エレベーター
恭介「...屋上なんかに、何の用?」
|-
さやか「いいから、いいから」
| colspan="2"|
|車椅子に乗せた恭介を押して、エレベーターに乗り込むさやか。
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| colspan="2"|
|屋上の行き先ボタンを押す。やや不思議そうな恭介。
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|恭介「...屋上なんかに、何の用?」
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|さやか「いいから、いいから」
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|}


口病院屋上
{| border="1" cellpadding="5" cellspacing="1" style="border-collapse: collapse; border-color: #ddd; margin-top: 20px;"
屋上に出た恭介とさやかを出迎える人々ーー恭介の両親、主治医、そして手の空いていた病院のスタッフたち一同。
! colspan="2" width="50%" |
晴れヤかな拍手。
! width="50%" |病院屋上
恭介、初めは驚き戸惑うものの、やがて皆の祝福に照れはじめる。
|-
恭介「みんなーー」
| colspan="2"|
さやか「本当のお祝いは、退院してからなんだけど...足より先に手が治っちゃったしね」
|屋上に出た恭介とさやかを出迎える人々ーー恭介の両親、主治医、そして手の空いていた病院のスタッフたち一同。
恭介の父親が進み出る。手にはバイオリンのケース。
|-
やや狼狽える恭介。
| colspan="2"|
恭介「それはーー」
|晴れヤかな拍手。
恭介の父「お前からは処分しろと言われていたが...どうしても捨てられなかったんだ。私は」
|-
感極まりつつも、努めて平静を装っている恭介の父。(ちなみに恭介の師でもあります)
| colspan="2"|
差し出されたバイオリンを、恐る恐る受け取る恭介。
|恭介、初めは驚き戸惑うものの、やがて皆の祝福に照れはじめる。
恭介の父、目線で主治医の顔色を窺う。
|-
まあ大丈夫でしょう、と笑顔で頷く主治医。
|
恭介の父「さあ、試してごらん。怖がらなくていい」
|恭介「みんなーー」
恭介「...」
|-
やや躊躇する恭介だが、やがて覚悟を決め、バイオリンを構えて弓を弦に当てる。
|
ゆっくりと演奏が始まるラフマニノフのヴオカリーズ。
|さやか「本当のお祝いは、退院してからなんだけど...足より先に手が治っちゃったしね」
初めは恐る恐る、だが次第に情熱的に。
|-
まったく衰えていない天賦の才能。その場にいる全員が陶然と聞き惚れる。
| colspan="2"|
諦めていた演奏の喜びに、涙を流しながら弾き続ける恭介。
|恭介の父親が進み出る。手にはバイオリンのケース。
さやかM『マミさん...あたしの願い、叶つたよ』
|-
その様子に、さやかは至福を噛み締めて、青い空を見上げる。
| colspan="2"|
さやかM『後悔なんて、あるわけない...あたし、今、最高に幸せだよ...』
|やや狼狽える恭介。
演奏が終わる。車椅子の上で精根尽きて、だが清々しく脱力する恭介。聴衆からはやんやの拍手喝采。
|-
感激の涙に喉を詰まらせながら、苦笑いする恭介。
|
恭介「...駄目だなあ...レッスン、サボりすぎちゃったから...全然、なってない...」
|恭介「それはーー」
恭介の父「また、やり直せばいい。いくらでも練習すればいい」
|-
恭介の父も、もはや涙を抑えきれない。
|
見守るさやかは、満ち足りた想いで、自分のソウルジエムを握リしめる。
|恭介の父「お前からは処分しろと言われていたが...どうしても捨てられなかったんだ。私は」
|-
| colspan="2"|
|感極まりつつも、努めて平静を装っている恭介の父。(ちなみに恭介の師でもあります)
|-
| colspan="2"|
|差し出されたバイオリンを、恐る恐る受け取る恭介。
|-
| colspan="2"|
|恭介の父、目線で主治医の顔色を窺う。
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| colspan="2"|
|まあ大丈夫でしょう、と笑顔で頷く主治医。
|-
|
|恭介の父「さあ、試してごらん。怖がらなくていい」
|-
|
|恭介「...」
|-
| colspan="2"|
|やや躊躇する恭介だが、やがて覚悟を決め、バイオリンを構えて弓を弦に当てる。
|-
| colspan="2"|
|ゆっくりと演奏が始まるラフマニノフのヴオカリーズ。
|-
| colspan="2"|
|初めは恐る恐る、だが次第に情熱的に。
|-
| colspan="2"|
|まったく衰えていない天賦の才能。その場にいる全員が陶然と聞き惚れる。
|-
| colspan="2"|
|諦めていた演奏の喜びに、涙を流しながら弾き続ける恭介。
|-
|
|さやかM『マミさん...あたしの願い、叶つたよ』
|-
| colspan="2"|
|その様子に、さやかは至福を噛み締めて、青い空を見上げる。
|-
|
|さやかM『後悔なんて、あるわけない...あたし、今、最高に幸せだよ...』
|-
| colspan="2"|
|演奏が終わる。車椅子の上で精根尽きて、だが清々しく脱力する恭介。聴衆からはやんやの拍手喝采。
|-
| colspan="2"|
|感激の涙に喉を詰まらせながら、苦笑いする恭介。
|-
|
|恭介「...駄目だなあ...レッスン、サボりすぎちゃったから...全然、なってない...」
|-
|
|恭介の父「また、やり直せばいい。いくらでも練習すればいい」
|-
| colspan="2"|
|恭介の父も、もはや涙を抑えきれない。
|-
| colspan="2"|
|見守るさやかは、満ち足りた想いで、自分のソウルジエムを握リしめる。
|-
|}


口街のランドマークタワー、展望台
{| border="1" cellpadding="5" cellspacing="1" style="border-collapse: collapse; border-color: #ddd; margin-top: 20px;"
コイン式双眼鏡で、病院の屋上のさやかを観察している杏子。
! colspan="2" width="50%" |
双眼鏡は脊子のソウルジエムがめり込み、即製の魔道具と化している。
! width="50%" |街のランドマークタワー、展望台
杏子「ふーん、あれがこの街の新しい魔法少女ね...」
|-
手にしたワッフルをむしゃむしゃ食べながら、冷笑する杏子。
| colspan="2"|
その隣にはキユウベえ。
|コイン式双眼鏡で、病院の屋上のさやかを観察している杏子。
キユウべえ「本当に彼女と事を構える気かい?」
|-
杏子「だってチヨロそうじゃん。瞬殺っしょ。あんなやつ」
| colspan="2"|
双眼鏡から顔を上げ、ソウルジエムを引っこ抜く杏子。
|双眼鏡は脊子のソウルジエムがめり込み、即製の魔道具と化している。
途端に双眼鏡は魔力を失ってもとの姿に。
|-
杏子「それとも何?文句あるっての?あんた」
|
キユウべえ「...すべて君の思い通りにいくとは限らないよ。
|杏子「ふーん、あれがこの街の新しい魔法少女ね...」
この街にはもう一人、魔法少女がいるからね」
|-
杏子「へえ? 何者なの、そいつ」
| colspan="2"|
キユウベえ「僕にもよく分からない」
|手にしたワッフルをむしゃむしゃ食べながら、冷笑する杏子。
杏子「ハア?」
|-
キユウベえを恫喝するかのように眼差しを険しくする杏子。
| colspan="2"|
杏子「どういうことさ。そいつだってあんたと契約して魔法少女になったんでしょ?」
|その隣にはキユウベえ。
キユウベえ「そうとも言えるし、違うとも言える」
|-
意味深にはぐらかすキユウベえ。はったりではなく厄介な事情があるらしいと察して、眉を顰める杏子。
|
キユウベえ「あの子は極めつきのイレギュラーだ。どういう行動に出るか、僕にも予想しきれない」
|キユウべえ「本当に彼女と事を構える気かい?」
杏子「ハン...上等じゃないの」
|-
不敵に笑って、残りのワッフルを口に放り込む杏子。
|
杏子「退屈すぎても何だしさ。ちったあ面白味もないとねえ」
|杏子「だってチヨロそうじゃん。瞬殺っしょ。あんなやつ」
|-
| colspan="2"|
|双眼鏡から顔を上げ、ソウルジエムを引っこ抜く杏子。
|-
| colspan="2"|
|途端に双眼鏡は魔力を失ってもとの姿に。
|-
|
|杏子「それとも何?文句あるっての?あんた」
|-
|
|キユウべえ「...すべて君の思い通りにいくとは限らないよ。この街にはもう一人、魔法少女がいるからね」
|-
|
|杏子「へえ? 何者なの、そいつ」
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|
|キユウベえ「僕にもよく分からない」
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|杏子「ハア?」
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| colspan="2"|
|キユウベえを恫喝するかのように眼差しを険しくする杏子。
|-
|
|杏子「どういうことさ。そいつだってあんたと契約して魔法少女になったんでしょ?」
|-
|
|キユウベえ「そうとも言えるし、違うとも言える」
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| colspan="2"|
|意味深にはぐらかすキユウベえ。はったりではなく厄介な事情があるらしいと察して、眉を顰める杏子。
|-
|
|キユウベえ「あの子は極めつきのイレギュラーだ。どういう行動に出るか、僕にも予想しきれない」
|-
|
|杏子「ハン...上等じゃないの」
|-
| colspan="2"|
|不敵に笑って、残りのワッフルを口に放り込む杏子。
|-
|
|杏子「退屈すぎても何だしさ。ちったあ面白味もないとねえ」
|-
|}


==Part B==
==Part B==

Revision as of 15:15, 28 January 2013

Part A

病院屋上
夕陽の中、キユウベえと向き合って対峙するさやか。
さやか「本当に、どんな願いでも叶うんだね...」
キユウベえ「大丈夫。君の祈りは間違いなく遂げられる。じゃあ、いいんだね?」
さやか「うん。やって」
キユウべえ、手を差し伸べてさやかの胸に触れる。
さやか「...ッ!」
痛みに似た衝撃に身を震わせるさやか。
キユウベえが手を離すと、さやかの心臓の位置れから、ゆっくりと光る球が浮かび上がり、空中に浮遊する。さやかのソウルジエム。
出現した宝石を、恐る恐る、両手で掴み取るさやか。
キユウベえ「さあ、受け入れるといい。それが君の運命だ」
さやか「...」
決意に表情を引き締め、頷くさやか。
朝の教室
朝のHR前、漫然と談笑している生徒たち。
仁美の机に、さやかとまどかが屯している。
ふわ、と欠伸をする仁美。
仁美「ああ、はしたない...ごめんあそばせ」
さやか「どうしたのよ仁美?寝不足?」
仁美「ええ。ゆうべは病院やら警察やらで夜遅くまで...」
まどか「...」
息を呑みそうになるまどか。だがさやかは素知らぬ顔で続ける。
さやか「え~? 何かあったの?」
仁美「なんだか私、夢遊病っていうのか...それも同じような症状の人が大勢いて、気がついたらみんなで同じ場所に倒れていたんですの」
さやか「はあ?何ソレ?」
仁美「お医者様は集団幻覚だとか何とか...今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの。ああ、面倒臭いわ・・・・・」
さやか「そんなことなら学校休んじゃえば良かったのに」
仁美「駄目ですわ。それではまるで本当に病気みたいで、家の者がますます心配してしまいますもの」
さやか「さっすが優等生。体いわあ」
まどか「...」
からからと笑うさやか。まどかはそこまで厚顏に上辺を繕えず、決まり悪く沈黙する。
ほむら「...」
そんな二人を、やや離れた席から、無表情に観察しているほむら。
河原の土手
放課後(士曜なので半ドンです)、土手の芝生に寝転がって青空を見上げているさやか。隣に座っているまどか。
さやか「んーツ、久々に気分いいわぁ。爽快爽快ッ!」
まどか「さやかちゃんはさ、...恐くは、ないの?」
さやか「ん? そりゃ、ちょっとは恐いけど。まあ昨日のヤツにはあっさり勝てたし」
あくまで笑顔のさやか。が、やや真面目な声で続ける。
さやか「もしかしたらまどかと仁美とーー友達二人も同時に亡くしたかもしれないって、そっちの方がよっぽど恐いよね」
まどか「...」
さやか「だ・か・らツ」
身体を起こし、ピシッ、と格好つけてソウルジエムを構えて見せるさやか。
さやか「何?っかな。自信? 安心感?ちょっと自分を褒めちやいたい気分つうかね。まー舞い上がっちゃってますねーあたし。これからも見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン護リまくっちゃいますからねー」
さやかが一人でテンションを上げまくる一方で、まどかはいまいち素直に笑えない。
まどか「後悔とか、ぜんぜんないの?」
さやか「そーねえ...後悔っていえば、迷ってたことが後悔かな」
苦笑いしつつ、ややシリアスに過去を顧みてしまうさやか。
さやか「どうせだったら、もうちょっと早く、心を決めるべきだったな、って」
まどか「...」
まどかとさやか、共に思い出すのは、三話でのマミの最期。
さやか「あのときの魔女、あたしと二人がかりで戦ってたら、マミさんも死なないで済んだかもしれない」
まどか「わたし...」
まどか、マミの最後の戦いの前に、魔法少女になることを誓けったことを思い山す。魔法少女への道を志したのは、実はさやかよりまどかの方が先だったのだ。
まどか「...」
責められるべきは自分だ、と悔恨に泣きそうになるまどか。
そんなまどかの肩を、励ましの笑顔でこづくさやか。
さやか「さては、なんか変なこと考えてるな?」
まどか「...わたし...わたしだって...」
さやか「なっちゃった後だから言えるの。こーゅーことは」
まどかの葛藤を和らげるために、あえて気安い口調で言い放つさやか。
さやか「『どうせなら」っていうのがミソなのよ。あたしはさ、なるべくして魔法少女になったわけ」
まどか「さやかちゃん...」
さやか「願い事、見つけたんだもの。命懸けで戦う羽目になったって構わないって、そう思えるだけの理由があったの。そう気付くのが遅すぎた、っていうのが、ちょっと悔しいだけでさ...」
まどかに、にっこりと微笑みかけるさやか。
さやか「だから、引け目なんて感じなくていいんだよ。まどかは魔法少女にならずにすんだっていう、ただそれだけのことなんだから」
まどか「...」
素直に納得はできないものの、ともかく領くまどか。
さやかは立ち上がり、気持ちよさそうに伸びをする。
さやか「ん~っ、さて、と。じゃあそろそろ、あたしは行かないと」
まどか「? 何か用事があるの?」
さやか「まあ。ちょっと、ね」
何やら浮かれた表情のさやか。
恭介の病室
見舞いに来ているさやか。恭介は以前より明らかに血色がいい。
さやか「そっか。退院はまだなんだ...」
恭介「足のリハビリがまだ済んでないしね。ちゃんと歩けるようになってからでないと」
不思議そうに、全治した左手をしげしげと眺める恭介。
恭介「手の方も、いったいどうして急に治ったのか、まったく理由が分からないんだってき。だからもうしばらく、精密検査がいるんだって」

さやか「恭介自身は、どうなの?どっか身体におかしなとこ、ある?」

恭介「いや、なさすぎて恐いっていうか...事故に遭ったのさえ悪い夢だったみたいに思えてくる。なんで僕、こんなベッドに寝てるのかな、って。...さやかが言った通り、奇跡だよね、これ」
気まずげに目を伏せる恭介。
さやか「ん?どしたの?」
恭介「さやかには...酷いこと、言っちゃったよね。いくら気が滅入ってたとはいえ...」
にこやかに笑い飛ばすさやか。
さやか「変なこと思い山さなくていーの。今の恭介は大喜びしてて当然なんだから。そんな顔してちゃ駄目だよ」
恭介「うん。...なんか、実感なくてさ」
さやか「まあ、無理もないよね」
ちらり、と腕時計を確かめるさやか。
さやか「うん、そろそろかな」
恭介「?」
さやか「恭介、ちょっと外の空気、吸いに行こ」
病院エレベーター
車椅子に乗せた恭介を押して、エレベーターに乗り込むさやか。
屋上の行き先ボタンを押す。やや不思議そうな恭介。
恭介「...屋上なんかに、何の用?」
さやか「いいから、いいから」
病院屋上
屋上に出た恭介とさやかを出迎える人々ーー恭介の両親、主治医、そして手の空いていた病院のスタッフたち一同。
晴れヤかな拍手。
恭介、初めは驚き戸惑うものの、やがて皆の祝福に照れはじめる。
恭介「みんなーー」
さやか「本当のお祝いは、退院してからなんだけど...足より先に手が治っちゃったしね」
恭介の父親が進み出る。手にはバイオリンのケース。
やや狼狽える恭介。
恭介「それはーー」
恭介の父「お前からは処分しろと言われていたが...どうしても捨てられなかったんだ。私は」
感極まりつつも、努めて平静を装っている恭介の父。(ちなみに恭介の師でもあります)
差し出されたバイオリンを、恐る恐る受け取る恭介。
恭介の父、目線で主治医の顔色を窺う。
まあ大丈夫でしょう、と笑顔で頷く主治医。
恭介の父「さあ、試してごらん。怖がらなくていい」
恭介「...」
やや躊躇する恭介だが、やがて覚悟を決め、バイオリンを構えて弓を弦に当てる。
ゆっくりと演奏が始まるラフマニノフのヴオカリーズ。
初めは恐る恐る、だが次第に情熱的に。
まったく衰えていない天賦の才能。その場にいる全員が陶然と聞き惚れる。
諦めていた演奏の喜びに、涙を流しながら弾き続ける恭介。
さやかM『マミさん...あたしの願い、叶つたよ』
その様子に、さやかは至福を噛み締めて、青い空を見上げる。
さやかM『後悔なんて、あるわけない...あたし、今、最高に幸せだよ...』
演奏が終わる。車椅子の上で精根尽きて、だが清々しく脱力する恭介。聴衆からはやんやの拍手喝采。
感激の涙に喉を詰まらせながら、苦笑いする恭介。
恭介「...駄目だなあ...レッスン、サボりすぎちゃったから...全然、なってない...」
恭介の父「また、やり直せばいい。いくらでも練習すればいい」
恭介の父も、もはや涙を抑えきれない。
見守るさやかは、満ち足りた想いで、自分のソウルジエムを握リしめる。
街のランドマークタワー、展望台
コイン式双眼鏡で、病院の屋上のさやかを観察している杏子。
双眼鏡は脊子のソウルジエムがめり込み、即製の魔道具と化している。
杏子「ふーん、あれがこの街の新しい魔法少女ね...」
手にしたワッフルをむしゃむしゃ食べながら、冷笑する杏子。
その隣にはキユウベえ。
キユウべえ「本当に彼女と事を構える気かい?」
杏子「だってチヨロそうじゃん。瞬殺っしょ。あんなやつ」
双眼鏡から顔を上げ、ソウルジエムを引っこ抜く杏子。
途端に双眼鏡は魔力を失ってもとの姿に。
杏子「それとも何?文句あるっての?あんた」
キユウべえ「...すべて君の思い通りにいくとは限らないよ。この街にはもう一人、魔法少女がいるからね」
杏子「へえ? 何者なの、そいつ」
キユウベえ「僕にもよく分からない」
杏子「ハア?」
キユウベえを恫喝するかのように眼差しを険しくする杏子。
杏子「どういうことさ。そいつだってあんたと契約して魔法少女になったんでしょ?」
キユウベえ「そうとも言えるし、違うとも言える」
意味深にはぐらかすキユウベえ。はったりではなく厄介な事情があるらしいと察して、眉を顰める杏子。
キユウベえ「あの子は極めつきのイレギュラーだ。どういう行動に出るか、僕にも予想しきれない」
杏子「ハン...上等じゃないの」
不敵に笑って、残りのワッフルを口に放り込む杏子。
杏子「退屈すぎても何だしさ。ちったあ面白味もないとねえ」

Part B

口ファーストフード店 まどか達の行きつけの店。今日はまどかとほむらが差し向かいに座っている。まどかは定番のバリューセットだが、ほむらはコーヒー単品の注文。 明らかに緊張してガチガチになっているまどか。 ほむら「話って、何?」 昨日と違ってあからさまに拒絶の雰囲気を放っているほむら。まどかは萎縮してしまい、話しづらい。 まどか「あのね、さやかちゃんの事、なんだけど...」 ほむら「...」 さやかの名前を聞いた途端、ますます冷淡な雰囲気を漂わせはじめるほむら。さらに慌てるまどか。 まどか「ぁ、あの子はね、思い込みが激しくて意地っ張りで、けつこうすぐに人とケンカしちやったり...でもね、すっごくいい子なの。優しくて勇気があって、誰かのためと思ったら頑張りすぎちゃって...」 ほむら「魔法少女としては致命的ね」 まどか「そう...なの?」 ほむら、コーヒーを口に運んでから、あくまで冷淡に続ける。 ほむら「度を超した優しさは甘さに繋がるし、蛮勇は油断になる。そしてどんな献身にも見返りなんてない...それを弁えていなければ魔法少女は務まらない。だから巴マミもん命を落とした」 まどか「そんな言い方やめてよ!」 思わずかっとなって反駁してから、口論しに来たのではないと思い直し、しゅんとなるまどか。 まどか「...そう。さやかちゃん、自分では平気だって言つてるけど...でももしマミさんのときと同じようなことになったら、って思うと...わたし、どうすればいいのか...」 ほむら「美樹さやかのことが、心配なのね」 こくん、と領くまどか。 まどか「わたしじゃあ、もう、さやかちゃんのカになってあげられないから...だから、ほむらちゃんにお願いしたいの」 まどか、勇気を出して、真正面からほむらを見つめて頼み込む。 まどか「さやかちゃんと仲良くしてあげて。マミさんのときみたいに、ケンカしないで。魔女をやっつけるときも、みんなで協力して戦えば、ずっと安全なはずだよね?」 ほむら「...」 無言のままコーヒーを啜るほむら。辛抱強く返事を待つまどか。 やがて、根負けしたほむらが口を聞く。 ほむら「私は嘘をつきたくないし、できもしない約束をしたくもない」 まどか「...」 ほむら「だから、美樹さやかのことは諦めて」 きっぱり言い切るほむらに、悲しくなって目を潤ませるまどか。 まどか「...どうして、なの?」 ほむら「あの子は契約なんでするべきじゃなかった。たしかに私のミスよ。あなただけでなく彼女もきちんと監視しておくべきだった」 まどか「ならーー」 ほむら「でも、責任を認めた上で言わせてもらうわ。今となっては、どうやっても償いきれないミスなの。死んでしまった人が帰ってこないのと同じこと」 淡々と、だが有無を言わせぬほむらの語調。まどかは納得できず、さりとて言い返すこともできず、ただ項垂れるしかない。 ほむら「一度魔法少女になってしまったら、もう救われる望みなんて、ない。...あの契約は、たったひとつの希望と引き換えに、すべてを諦めるってことだから」 まどか「...だから、ほむらちゃんも諦めちゃってるの?自分のことも、他の子のことも、全部?」 ほむら「ええ」 さも当然のように領くほむら。 ほむら「罪滅ぼし、なんて言い訳はしないわ。私はどんな罪を背負おうと、私の戦いを続けなきゃならない」 ほむら、飲みかけのコーヒーの横に千円札を一枚置き、席を立つ。 ほむら「時間を無駄にさせたわね。ごめんなさい」 立ち去るほむら。まどかは遣リ場のない悔しさに涙して、その場を動けない。

口さやかの私室 外出の準備を整えるさやか。いよいよ単独で初の魔女探レ。 鏡の前で、両手で顔をひっぱたいて気合いを入れる。 その様子を見守っているキユウベえ。 キュゥベえ「緊張しているのかい?」 さやか「まーねー。一つ間違えたら御陀仏なわけだし」

口美樹家のアパートの前 アパートを出たところで、さやかは、すぐ側の街灯の下で待っていたまどかの姿に気付く。 さやか「...まどか?」 まどか「さやかちゃん、これから、その...」 さやか「そ。悪い魔女を捜してパトロール。これも正義の昧方の務めだからねー」 茶化して言、っさやかだが、まどかは笑う気になれない。 まどか「一人でーー平気なの?」 さやか「へーきへーき。マミさんだってそうしてたんだし。弟子としてそのぐらいはねー」 それを言われた途端、まどかは、孤独に耐えかねていたマミの本音を思い出す。 まどか「ぁ、あのねてわたし、何にもできないし、足手まといにしかならないって分かってるんだけど、でも...邪魔にならない所まででいいの。行ける所まで、一緒に...連れてってもらえたら、って...」 さやか「...」 さやか、一旦きょとんとなってから、まどかの気持ちを理解して優しく微笑む。 さやか「頑張りすぎじゃない?」 まどか「ご、ごめん...駄目だよね。迷惑だつてのは分かつてたの...」 さやか「ううん。すっごく嬉しい」 さやか、まどかの手を握る。 はっとなるまどか。 さやか「ね...分かる?手が震えちやってき。さっきから、止まらないの。情けないよね。もう魔法少女だつてのに、一人だと心細いなんでさ...」 まどか「さやかちゃん...」 さやか「邪魔なんかじゃない。凄く嬉しい。誰かが一緒にいてくれるってだけで、あたし、すっごく心強いよ。それこそ百人力って感じ」 まどか「わたし...」 さやか「必ず守るよ。だから安心して、あたしの後についてきて。今までみたいに、一緒に魔女をやっつけよ」 まどか「...うん」 はにかみながら領くまどか。 だがキユウべえはあくまで冷静に、さやかに問う。 キユウベえ「危険は承知の上なんだね?」 自信を込めて微笑むさやか。 さやか「あたしパカだから、一人だと無茶な出鱈目やらかしかねないし。まどかもいるんだって肝に銘じてれば、それだけ慎重になれると思う」 キユウべえ「そうか...うん。考えがあっての事なら、いいんだ」 まどか「キユウベえ...」 声をかけるまどか。キユウべえはさやかの肩に乗ったまま振り向き、視線だけをまどかに向けて、思念を送ってくる。 キユウベえ『君にも君の考えがあるんだろう?まどか』 まどか「...」 さやか抜きの密談に、ぎょっとなるまどか。 キユウベえ『さやかを守りたい君の気持ちは解る。実際、君が隣にいてくれるだけで、最悪の事態に備えた切り札を、ひとつだけ用意できるしね』 x x x 無人のマミの部屋。テーブルの上に置き去りにされたまどかの変身構想ノート。 閣の中で、どこからともなく風が吹き、数々の空想図が描かれたページがぱらぱらと捲れ上がる。 x x x ごくり、と生唾を呑むまどか。 まどか『わたしは...』 キユウベえ『今は何も言わなくていい。さやかもきっと反対するだろうし』 テレパシーで交わされるまどかとキユウベえの会話に、さやかは全く気付かない。 合みを込めた微笑をまどかに送るキユウベえ。 キユウべえ『ただーーもし君が心を決めるときが来たら、僕の準備はいつでも整ってるからね』 まどか『...うん』

口結界内部 いつもの魔女の結界よりも狭くて不安定な異空間を進むさやか、まどか、キユウベえ。 キユウベえ「この結界は、たぶん魔女じゃなくて使い魔のものだね」 さやか「楽に越したことないよ。こちとらまだ初心者なんだし」 まどか「あツ、あそこ!」 物陰に潜んでいる使い魔の姿を見つける一行。 使い魔「ギィッ、ギギッ!」 使い魔は侵入者を攻撃することすらせず、そのまま逃げに入る。 まどか「逃げるよ!」 さやか「任せて!」 さやか変身。 光弾を放ち、逃げる使い魔に追い打ち。 だがその攻撃が、不意に張られたバリアによって阻まれる。 まどか、さやか「えつ!?」 驚くまどかとさやか。唯一、状況を察したキュゥべえは苦い顔。 逃げる使い魔とさやかとの間に割り込んできたのは、魔法少女スタイルの杏子。右肩に拾を担ぎつつ、左手では鯛焼きを食べている。 杏子「ちょっとちょっと、何やってんのさアンタ達」 小馬鹿にした呆れ顔の杏子。 その閲に使い・隠は逃げて、姿を消す。 さやか「な:::逃がしちゃう!」 追おうとするさやかを、杏子の檎の切っ先が阻む。 その間に結界は解除され、周囲は人気のない裏路地の景色に。 杏子「見て分かんないの?あれ魔女じゃなくて使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん」 さやか「だって、あれ放つといたら、誰かが殺されるのよ!」 怒るさやかの剣幕に、ますます面倒臭そうに眉を顰める杏子。 杏子「だあからさ、4、5人ばかり喰って魔女になるまで待てつての。そうすりゃちゃんとグリーフシードも孕むんだからさ。アン夕、タマゴ産む前のニワトリ絞めてどーすんのさ」 さやか「な...」 杏子の言葉に愕然となるきゃか。その驚きはすぐさま怒りに。 さやか「魔女に襲われる人たちを...あんた、見殺しにするってい、つの!?」 呑気に鯛焼きを食べながら、呆れた風に歎息する杏子。 杏子「アンタさ、なんか大本から勘違いしてんじゃない?食物述鎖って知ってる?ガツコーで習ったよねえ?」 微笑みに邪悪さを覗かせる杏子。 杏子「弱い人間を魔女が喰う。その魔女をアタシたちが喰う。これが当たり前のルールでしょ。そういう強さの順番なんだから」 まどか「そんな...」 想像だにしなかった邪悪な思考に、震え上がるまどか。 さやか「あんたは...」 怒りのあまり言葉に詰まるさやか。 杏子「まさかとは思うけどーー」 杏子は冷ややかな侮蔑の眼差しで、さやかとまどかを見据えながら、キユウベえを顎で指す。 キユウベえ、さりげなく、さやかから離れてまどかに身を寄せている。 杏子「ゃれ人助けだの正義だの...その手のおちゃらけた冗談かますために、ソイツと契約したわけじゃないよね?アンタ」 さやか「だったら何だってのよ!」 叫ぶと同時に剣で杏子に斬りかかるさやかだが水杏子はさやかの動きを完全に見越して、右手一本で揮つた槍でガードする。 杏子「...ちょっとさあ、やめてくれない?」 相変わらず鯛焼きを食べながら、余裕の笑顔でさやかの剣を受け止めている杏子。さやかが渾身の力で押し込もうとも、びくともしない。 杏子は笑顔を引っ込め、冷淡な殺意の無表情に。 杏子「遊び半分で首突っ込まれるのってさあ...ほんとムカツクんだわ」 杏子はさやかの剣を振り払い、返す拾でさやかを一撃。 盛大に吹っ飛ばされるさやか。 さやか「あぐ...ッ!」 まどか「さやかちゃん!」 鼻で笑って踵を返す杏子。 杏子「フン、トーシロが。ちったあ頭冷やせつての」 そのまま立ち去ろうとした杏子だが、ふと背後の気配に眉を顰め、立一ち止まって振り返る。 苦しそうに呻きながらも、立ち上がるさやか。 杏子「...おっかしいなあ。全治三ヶ月、ってぐらいにはかましてやった筈なんだけど」 心配して戸惑うまどか。 まどか「さやかちゃん、平気なの...」 キユウベえ「彼女は癒しの祈りを契約にして魔法少女になったからね。ダメージからの回復力は人一倍だ」 さやか「誰が...あんたなんかに...」 杏子を睨み、怒りを込めて剣を構えるさやか。 さやか「あんたみたいなヤツがいるから、マミさんは...」 杏子「...うぜー、チョーうぜー」 鯛焼きの最後の一日を頬張って片付ける杏子。 さも欝陶しそうに舌打ちしながら、両手で槍を構え直す。 杏子「つーか何?そもそも口の利き方がなってないよねえ。 先輩に向かってさあ」 さやか「黙れえツ!」 斬りかかるさやか。応戦する杏子。 撃ち合う剣と槍。だが両手で槍を繰るようになった杏子は、ますます圧倒的である。 杏子「チャラチヤラ踊ってんじゃねーょ、ウスノロ!」 一矢報いるのも叶わぬどころか、たちまち追い詰められるさやか。 まどか「さやかちゃん...ッ!」 キユウベえ「まどか、近づいたら危険だ!」 容赦ない杏子の約を何発も受けて、膝をつくさやか。 さやか「ぐッ...うッ...!」 杏子「言って聞かせて分からねー、殴っても分からねーバカとなりや...あとは殺しちゃうしかないよねえ!」 杏子が繰り出すとどめの一撃。すんでのところで避けるさやか。 痛みに歯を食いしばっているものの、槍で受けた傷は、治癒魔術によってどんどん塞がっていく。 さやか「負けない...負けるもんかッ!」 再び愚直にも斬りかかっていくさやか。 痛ましいその姿が、まどかは正視に堪えない。 まどか「どうして...ねえ、どうして?魔女じゃないのに...どうして味方同士で戦わなきゃならないの!?」 キユウベえ「どうしょうもない...お互い、譲る気なんてまるでないよ」 激しい剣戦。余裕の笑みの杏子。ますます傷つくさやか。 まどか「お願い、キユウベえ、止めさせて...こんなのってないよ!」 キユウベえ「僕にはどうしょうもない。でもーー」 言葉に含みを込めて、まどかを見つめるキユウベえ。 キュゥべえ「どうしても、力ずくでも止めさせたいのなら、方法がないわけじゃないよ。まどかーーどうする?」 まどか「...ッ!」 胸を押さえるまどか。怯えて足が震える。 キユウベえ「あの戦いに割り込むには、同じ魔法少女でなきゃ駄目だ。でも君にならその資絡がある。本当にそれを望むなら、ね」 まどかM『そうだ...わたしが、契約すれば...』 追い詰められていくさやか。 それを救いたいと思いつつ、最後の勇気を固められず、躊躇するまどか。 さやか、ついに両足を砕かれて倒れ伏す。治癒して立ち上がるよりも、杏子の次の攻撃が早い。 杏子「終わりだよ!」 さやか「くーー」 まどか、自棄になり叫ぽうとする。 まどか「わたし...」 ほむら「ーーそれには及ばないわ」 ふいにまどかの背後に現れて、告げるほむら。 はっとして振り向くまどかだが、既にほむらの姿はない。 同時に、槍を繰り出そうとしていた杏子も、立ち上がろうとしていたさやかも、何故かそれぞれ全然別の位置で、別の方向を向いている。空振りで終わる杏子の槍。(ほむらが時間を止めて細工しました) 杏子「なーーツ!?」 さやか「え...?」 愕然となる二人。その中間に、平然と件んでいる魔法少女スタイルのほむら。